神が祭られた神社で、“神対応”を拝んだ。広島キャンプ恒例行事のひとつに、キャンプを行う宮崎・日南市にある鵜戸神宮への必勝祈願がある。今年も新井貴浩監督(46)、大瀬良大地選手会長らが7日、小雨が降る中、参拝した。

平日の午前ということで当然、一般の参拝客もいる。そこにたまたまカープファンの夫婦が旅行で来ていた。新井監督が来ることを知ると大喜びで、振り続ける小雨など気にせず待ち続けていた。すべてを終えた新井監督のもとにサインをもらおうと近づいたときには、女性の髪はびっしょりとぬれていた。

新井監督はすぐさま「拭いてください。風邪ひいてしまいますよ」と、球団から監督にと渡されたタオルを差し出したのだ。“新井さん”に会えた上にサインをもらい、さらには監督の優しい気遣いに触れた女性の瞳は潤んでいた。

その後、関係者との記念撮影をした新井監督は「せっかく還暦のお祝いで旅行に来られたのなら、一緒に写真を撮りましょう」と、大瀬良との間に夫婦を招き入れた。サインする際、女性が話しかけてきた内容を覚え、女性のことを思い、声をかけたのだ。すでに感極まっていた女性の涙腺は崩壊。涙を拭いて写真に納まった笑顔が輝いて見えたのは、雨にぬれていたからではないだろう。プロ野球という世界は人を幸せにするものなのだと再認識させられた。

新井監督の神対応は、この日に限ったことではない。キャンプ地入りから報道陣への対応は欠かさず、キャンプ地に訪れたファンへのサインは初日から毎日続けている。そのとき、その場にいた全員にするため、サインだけで20分以上かかることもある。「ファンの方がたくさん来ていると、自分たちもうれしいです」。練習中もファンを意識したパフォーマンスでスタンドを沸かせている。

シーズンに入れば、最大のファンサービスは勝利だ。野球の神は、そう簡単に振り向いてくれない。ただ、新井監督が神対応を見せた鵜戸神宮内にある「九柱神社」は野球と同じ9人の神様が祭られており、境内の至るところには今年の干支(えと)であるウサギがモチーフとなったものがあった。神頼みが必要ないシーズンになる-。そう願った1日だった。【広島担当=前原淳】

運玉を投げる広島大瀬良(2023年2月7日、代表撮影)
運玉を投げる広島大瀬良(2023年2月7日、代表撮影)