侍ジャパンのWBC優勝から1カ月ほどたったが、決勝まで取材した米国フロリダから帰国してしばらくは、会う人、会う人に「良かったね」「良かったね」と言われた。それだけ盛り上がったわけだが、ふと昔のことを思い出した。

四半世紀以上前になる。予備校の英語の授業でのこと。英文和訳で英単語はどこまで、そのままカタカナとして使っていいか? という話を講師がしてくれた。判断基準がユニークだった。「皆さんのお母さんが知っている言葉ならOKです」。例えば「computer」は、そのまま「コンピューター」と訳して構わない。「電子計算機」と訳された方が分かりにくい。でも「recession」は「リセッション」ではなく「景気後退」と訳しましょう、というわけだ。

講師は「もし、お母さんがキャリアウーマンなら当てはまらないけどね」と冗談めかした。今なら、それこそジェンダー的にアウトな授業だとは思うが、講師が言いたかったのは「その分野に興味がない人」も知っているか、どうか、ということだろう。

なぜ、そんな昔のことを思い出したのかというと、帰国した私にうれしそうに声をかけてくれた人の中には、普段は全く野球を見ない人もいたからだ。田舎に住む母だった。先日、久しぶりに帰省したら、優勝翌日の日刊スポーツを大事そうに取ってくれていて「WBC、本当に面白かった!」と昨日のことのように話していた。

栗山監督はWBCを通じて、日本を元気にしたい思いも抱いていた。母のような人は、きっと、たくさんいるのだと思う。知人の大学生の息子さんは、優勝した瞬間、テレビの前でぼろぼろ泣き出したという。これから始まる就職活動へのエネルギーをもらったようだ。ありきたりな言葉にはなるが「スポーツの力」を身近に感じた侍ジャパンの活躍だった。【侍ジャパン担当=古川真弥】