19犠打。ヤクルト中村悠平捕手(33)が26日の試合終了時点で積み重ねてきた数字だ。

規定打席には到達していないが、この数字はリーグトップだ。

涼しい顔で犠打を決め、さっそうとベンチに引き揚げる姿を今季、何度も見てきた。その中村は試合前練習で毎日のように、バント練習に臨む。ある日、聞いてみた。「バントうまいんだからそんなに練習しなくていいんじゃないの?」。私は答えを聞いて恥ずかしくなった。

「だから練習するんですよ」

弱肉強食のプロ野球の世界で、油断などありえなかった。「めっちゃ練習してきましたからね。練習して試合で成功して。その繰り返しで自信が付いてくる」と確固たる裏付けがあった。

チームでは長岡秀樹内野手(21)がバントに苦しんでいる。23日巨人戦(東京ドーム)では延長11回無死一、二塁でバントを2度ファウルし、最後はヒッティングで二ゴロの併殺打に。25日広島戦(マツダスタジアム)では9回無死一塁、バントが投前に転がり併殺プレーとなりチャンスが消えた。両試合ともその裏にサヨナラ負けを喫した。

中村にバントの極意を聞いた。「打球の勢いを殺す。そうすれば多少ピッチャー前に行ったって大丈夫なんですよ」。まさにシンプル・イズ・ザ・ベストの考え方だ。もちろん捕手前に転がるのもご法度だが。

「コースを狙いすぎると体が硬くなったりする。ただでさえバントは(重圧や緊張で)硬くなりがち。硬さのマックスを10だとしたら、構えの時は3とか4にして柔らかく待つ。バットに当てるときはどうしても10近くになっちゃうから、なるべく柔らかくして待った方がいい」

野球に携わる競技者へ、バントの名手からの貴重なアドバイスとなった。【三須一紀】

2023年6月、試合前の練習でバント練習するヤクルト中村
2023年6月、試合前の練習でバント練習するヤクルト中村