今年も多くの選手たちがプロの世界を去った。第2の人生へ踏み出す彼らを特集する「さよならプロ野球」を、全12回でお届けする。

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DeNA西森将司捕手(31)は、第2の人生へ向けて“二刀流”として走りだした。

「いつの日か、冠ゲームをやれたらいいなって。辞めた球団で、冠ゲームをしたことがある人って、なかなかいないですよね。それが一番の夢で、大きな目標ですね」

13年7月、阪神戦でプロ初打席初安打初打点を記録するDeNA西森
13年7月、阪神戦でプロ初打席初安打初打点を記録するDeNA西森

10月1日に戦力外通告を受け、現役引退を決断した。横浜市の不動産会社エンゼルホームに入社。新設のスポーツ企画開発課に所属し、新たな事業を任されることになった。まだ確定ではないが、来年あたりにハマスタのお膝元である馬車道付近に出す予定のゴルフスタジオの運営を任された。シミュレーションゴルフがメインの店舗だが、イベントスペースも広く、野球関係のイベントも考えているという。

不動産業の会社員でもあり、“店舗経営者”という一国一城の主でもある。「そんな大層なものではないですよ」と少し恥ずかしそうに笑ったが「ドリンクはアルコールを含めて提供していこうと思っています。食事はどうするか、これからですね」。経営者の顔だ。

DeNA西森の年度別成績
DeNA西森の年度別成績

他球団の裏方の話もあった。それでもハマスタ近くでの仕事を選んだ。「自分は横浜にしかいませんでしたし、ここで育った。恩返しになるか、分からないけど、ファンの人に喜んでもらえたら」。11年育成ドラフト2位で入団し、13年に支配下登録をつかみ取った苦労人。捕手ながら、両打ちに挑戦するなど、生き残るため必死にもがいたプロ8年間だった。

「初安打、初スタメン。もちろん、育成から支配下になれた時のこともすごく印象に残っていますね。やっぱり、初めてのことはどれも」。事業計画書を練りながら、収支の計算…。未経験のジャンルで悪戦苦闘する日々。「初」冠試合へ向けて-。「仕事で成功しないといけないし、休む暇もないですね」。ハマスタを見つめながら、西森の挑戦は続く。【栗田尚樹】

19年DeNA退団選手(※は育成)
19年DeNA退団選手(※は育成)