将来の米国野球殿堂入りが確実視されるエンゼルスのアルバート・プホルス内野手(39)のバットが、世界で拡大を続けている。04年に創設されたバットメーカー「マルッチ」は現在、メジャーリーグのシェアNO・1。日本、韓国などアジア圏にも進出している。10年足らずでいかにして地位を築いたか。素材、重さ、日本の型との違いなど、強みに迫った。

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打てば打つほど、記録が生まれる。エンゼルスの強打者プホルスは、通算本塁打が656本で歴代6位、2075打点は同4位タイ、3202安打は外国人選手では歴代1位など、数々の偉業をここ数年で達成している。商売道具のバットはMマークの「マルッチ」。100年以上の歴史があるスラッガー社、ローリングス社をごぼう抜きし、04年の創設からわずか9年でバットメーカー最大手という地位を築いた。

今年からマルッチ社がNPB公認ステッカーを貼ることが許可される(マルッチ社提供)
今年からマルッチ社がNPB公認ステッカーを貼ることが許可される(マルッチ社提供)

米国中東部、ルイジアナ州2番目の都市で人口約22万人のバトン・ルージュに本社と工場が隣接する。13年に米国NO・1となり、17年には競合のビクタス社と経営統合。マーケティング担当のカイル・オルソ氏は「メジャーの登録選手は毎日のように変わるから、正確な数字は測り難い」とした上で「一時期はMLB選手全体のシェア60%を超えた」と明かした。

SNSの普及など技術が発展しても、マルッチのマーケティング法は古典的だ。オルソ氏によれば「選手にバットを試してもらって、1人ずつ広げていった。大きなキャンペーンはなかった」。例えば、同社CEOのカート・エインワース氏は元メジャーリーガーで、プホルスと面識があった。精力的に同社のバットを勧め、06年から愛用バットとされるまでに高い信頼を獲得。その後プホルスから他選手へ、また選手から選手の口コミで、徐々に知名度を上げていった。

マルッチ社のバットを愛用するプホルス
マルッチ社のバットを愛用するプホルス

近年はアジア進出に力を入れている。16年から下請け業者を通じ、マルッチ製のバットをNPB選手に提供。韓国や台湾にも進出し、19年シーズンは3カ国で年間約1000本、今年には1500~2000本に増える想定だ。日本からは昨年11月の時点で100本ほどの発注を受けており、キャンプが始まる2月ごろには300~400本となる見込み。約15選手に提供予定で、中でもヤクルト中山は法大3年時からプホルスモデルを使用しており、今季も同タイプを発注しているという。

日本へ進出して4年あまり。昨年までは下請け業者を介していたが、今年からはマルッチ社が自ら、NPB公認ステッカーを製造したバットに貼ることを許可された。オルソ氏は「我々にとって非常に重要なこと。NPBが、良質なメーカーとして信頼してくれた証しだと思う」。プレミア12でも、広島の菊池涼介内野手(29)が同社のバットを使用した。メジャー最大のバットメーカーは、日本で確実に浸透し始めている。(つづく)【斎藤庸裕】