2021年が幕を開け、今年もまた新たなシーズンが始まる。昨年のプロ野球は、ソフトバンクが日本シリーズ4連覇を達成。巨人は2年連続でシリーズ4連敗を喫したわけだが、ここまでやられれば力の差と言うしかない。両チームというより、セ・リーグとパ・リーグの差が「もろ」に現れたと捉えるべきだろう。

ソフトバンクの投手は、ストレートを軸にフォークボール、縦のカーブをどんどんストライクゾーンに投げ込んでくる。投手有利のカウントを簡単に作って、優位に試合を運ぶ姿が印象的だった。

第1戦、第2戦と見る中で共通点に気付いた。ソフトバンクの投手は、テークバックからフィニッシュまで、しっかりと型にはまっている。投球には原理原則があるのだが、リリースから逆算し、合理的でロスなく、最大限の力を放出している。理にかなったフォームから投げ込まれる直球が150キロ以上をマークする上に、コースを間違えることも少なかった。

初戦で投げた千賀君は、状態がいいようには見えなかったが、コースの間違いは少なかった。オーソドックスな間合いで投げ、セにはいない160キロ前後のストレートと落差の大きいフォーク、カットボール、スライダーを織り交ぜていた。

2戦目に先発した石川君の投球は、アマチュアの選手におおいなるヒントを与えた。1球1球の間合いが短く、相手に考える時間を与えなかった。過去にも小川健太郎さんや坂井勝二さん、森中千香良さんらもテンポが速かったが、石川君は同等。打者とすれば嫌だろう。

巨人の打者にとって、直球と同じくらい厄介だった球種がカーブである。大投手と言われた多くの人は、真っすぐと大きな縦のカーブ、持っていればもう1種類の球種を対角線に放り、勝負していた。速い球と大きなカーブで緩急をつけ、高低を軸に攻めるパターンだった。

今のセはスライダー、シュートなどを中心に、横変化の揺さぶりで攻める投手が目立つ。しかし、打者からすれば、縦より横変化の方が対処しやすいと聞いたことがある。対戦経験の少ない相手であれば、なおさらだろう。

なぜ、セには150キロ以上のボールを投げる投手が少ないのか? ドラフトにかかる前は、それなりの速い球を投げていたはずである。教育方針も1つだと思えるが、速い球を継続して投げる筋力が乏しいと言えるのではないか。根本的な話になるが、スカウティング、若い選手の指導方法など、根本からマニュアルを考え直す時期に来たと感じる。

パと対等に勝負するには、セの野手は155キロ以上の球を打ち返せるようになり、投手は155キロ以上でコントロールをつけ、ボール1個の出し入れで勝負できる選手が複数、出てきて総体のレベルを押し上げることが必須になる。このままでは、何年間はパに追いつけない気がする。(つづく)

小谷正勝氏(2019年1月18日撮影)
小谷正勝氏(2019年1月18日撮影)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算24勝27敗6セーブ、防御率3・07。79年から投手コーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団でコーチ、13年からロッテ。17年から19年まで再び巨人でコーチを務め、多くの名投手を育てた。