2年ぶりに帰ってきた夏の甲子園。プロ野球に選手、コーチなどで40年以上携わってきた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が、現地で球児たちの一挙手一投足に目を凝らし、目に留まった選手、プレーを紹介します。
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第2試合は新田のセンター長谷川のビッグプレーが最大のポイントとなった。7回裏、静岡は同点に追いつき、なお1死一塁。左打者山岸の打球は、左中間寄りへ飛んだ。
打った瞬間、私は抜けたと思った。長谷川は背走しながら左手のグラブを目いっぱい伸ばし好捕。勢い余って転ぶが、すぐに起き上がりカットマンのショートから一塁に転送し、ダブルプレーが成立した。静岡に傾きかけていた流れを、長谷川の渾身(こんしん)のプレーで、再び引き戻した。直後の8回表の勝ち越し2点は、このプレーが伏線となったのは間違いない。
広く、浜風の吹く甲子園の外野は、守備力が問われる。長谷川は、ライナー性の打球に対して落下地点を感覚的に見極め、一直線で疾走。浜風と、左打者特有の左翼へ切れていく打球を加味し、見事にピンポイントで落下点に到達したからこそのプレーだった。
右利きのセンターが、左中間の打球を背走しながらキャッチするのは非常に難しい。これが右中間への当たりならば、視界がある程度確保できるため、捕球までのわずかな時間だが、打球は視野に入る。対して左中間の当たりは、背走しているため首を傾けるのにも限界がある。捕球寸前に打球が視界に飛び込んでくるイメージだ。彼もあれ以上のプレーはできないだろう。それほどのプレーを、正念場にやってのけた。
この初勝利でチームには大きな自信が生まれたと思う。何よりも、主将で4番を務め、捕手兼投手の古和田が、誰よりも喜んでいるだろう。悪送球で同点に追いつかれるきっかけをつくり、さらに打撃もいいところがなかった。それでも息を吹き返した新田のこの勝利は、大きい。
◆田村藤夫(たむら・ふじお) 1959年(昭34)10月24日生まれ、千葉県習志野市出身。関東第一から77年ドラフト6位で日本ハム入団。ロッテ-ダイエーを経て98年引退。引退後も99年から21年間、ソフトバンク、日本ハム、中日などのバッテリーコーチなど務めプロ野球界に携わった




