日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が、ノースアジア大明桜の風間球打(3年)をチェック。剛腕投手としての素質を感じ取った。

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55球のうち、非凡さを感じたのは2球。初回2死から空振り三振に打ち取った146キロ、2回先頭の4番右打者を見逃し三振に仕留めた118キロスライダー。カウント球で内容あるボールはあったが、捕手の目線から高いレベルで見た時は、この2球だった。

3回2死、カウント2-2からの146キロストレートをアウトロー付近に投じた。空振りしたものの、見逃せばボール。このボールがストライクゾーンにしっかり制球されていれば、このボールがベストだったとの印象を受けた。

ブルペンでの姿を見ると、黙々と投げるイメージ。投手は感情を表に出さない方がいい。ちょっとした結果で一喜一憂すれば、ピンチで不安が顔に出てしまう。風間の雰囲気は、気持ちも強く、自分のピッチングに集中できそうだ。

悪天候だったが、ピッチングは落ち着いていた。球速は最速149キロ。力を込めて投げる時と、加減して投げる時はかなり力感に差があった。変化球の時、力を抜いたストレート、もしくはツーシームの時は、フォームが緩む感じが見受けられた。レベルが上がれば、このわずかなフォームの違いが、打者にヒントを与える。145キロ以上は8球あった。この時と同等の腕の振りで変化球を投げることが課題になる。

150キロ台は出なかったが、天候や初めての甲子園のマウンドなどを考えると、149キロは高校生レベルではトップクラス。ノーゲームになった後、各球団のスカウトと話したが、この日と同じ感じで157キロをマークしたと聞いた。確かに、この日のピッチングで157キロなら「オッ」と思わせるピッチャーだ。

注目していた球質は、重そうな部類に入る。プロ1年目のキャンプで佐々木朗希(ロッテ)のボールを見たが、それと比べると、佐々木朗がスピン量で空振りが取れるのに対し、風間は剛球という感じだ。ルーキーというくくりで球質を考えると、代表的な例としてはスピン量で空振りが取れるのが野茂。重い球質で勝負するのが与田(現中日監督)。球宴や日米野球でボールを受けた中ではその2人の名前が浮かんだ。

球質なら風間は与田タイプとなる。プロでの与田は常時150キロ台後半を連発していた。亜大からNTT東京を経て体を仕上げてプロ入りしていた与田は、150キロ台を連発できる強さがあった。風間もこれからそうした強さを備えていけば、速くて重い球質で勝負できる可能性を秘める。

私は捕手なので投手のメカニックまでは言えないが、この日見た感じではまだ上体の力で投げている。下半身の重心の移動を上半身に伝えられるようになると、非常に楽しみな剛腕投手になっていくだろう。

この日の55球は13日以降の再登板にも心配はなさそうだ。甲子園のマウンドを経験した風間には、次回登板でぐいぐい押すピッチングを期待する。

◆田村藤夫(たむら・ふじお) 1959年(昭34)10月24日生まれ、千葉県習志野市出身。関東第一から77年ドラフト6位で日本ハム入団。ロッテ-ダイエーを経て98年引退。引退後も99年から21年間、ソフトバンク、日本ハム、中日などのバッテリーコーチなど務めプロ野球界に携わった