田村藤夫氏(61)のフェニックスリーグ(宮崎)リポート最終回は、19日の中日-DeNA戦から、中日の高卒3年目・石橋康太捕手(20=関東第一)の現状をリポートする。

石橋はまだ、バッティングではミスショットが多い。ここで打ち損じていては1軍でのチャンスはもらえない。この試合では4打数1安打だった。

中日石橋康太(2021年5月1日撮影)
中日石橋康太(2021年5月1日撮影)

第1打席は内角ストレートに詰まり一邪飛、第2打席は7球連続ファウルで粘るも、最後はカーブに空振り三振。第3打席は内角寄りストレートをやや詰まりながらも、ハーフライナーで右前安打。第4打席はカウント1-1からの3球目に空振りしたチェンジアップを、2-2から今度はうまく打ったが、いい当たりの遊ゴロに終わった。常にファーストストライクを積極的に、そして思い切りスイングしている。19年まで中日の2軍で指導してきただけに、この点に成長の跡は見えた。しかし、もっとストレートをしっかり捉えないと。物足りない。

石橋は捕手だが、この試合は三塁を守った。複数捕手でリーグを戦う時は交互に守備につく。このリーグでも、打力を買われたオリックス頓宮は一塁も守っていた。石橋にはまだ頓宮ほどの打力はない。バッティングを磨き、少しでも多く試合に出られるよう鍛えるしかない。守備では4回2死一、二塁で三塁線に強い打球が飛んだ。バウンドして跳ねたが飛び付くように手を伸ばし、体を目いっぱい使って捕球。三塁ベースを踏んだ。本職ではなくとも、目の前の守備によく集中していたと感じる。

スコアブックをつけ、気付いた点をメモしていると、よく声が出ている選手がいる。「ナイスボール」と、1球ごとに投手に声をかけている。三塁の石橋だった。捕手はそのポジションの性質上、1球ごとに声を出すことはあまりない。むしろ大事な局面で内野手、投手に確認をすることはあるが、投手を鼓舞する声がけはほとんどない。そんなことを考えていて、ふと思い浮かんだのは、ソフトバンクの松田だった。

彼はよく声が出ている。それもチームを活性化させ、集中力を促進させる効果的な声だ。私は捕手の立場から考えるが、こういう選手がいると常にチームには適度な緊張感が保たれる。そして、そういう選手はセ・リーグでは思い付かない。パでも松田くらいか。

石橋のそういう資質は大切だと感じる。捕手に入ればこんなに声を出す余裕はなくなるだろう。しかし、三塁で一生懸命投手をもり立て、雰囲気を良くしようと声を張る姿は印象に残った。フェニックス取材最終日に、野球選手の原点とも言うべき試合に取り組む姿勢を再認識した。(日刊スポーツ評論家)(この項おわり)