オリックス山本の1位独占に、意外な投手が待ったをかけた。今季は4つのタイトルに最多完封を加えた「5冠」を達成。セイバーメトリクスの指標でもほとんどの項目が1位と文句なしの成績を収めたが、与四球率ではリーグ1位になれなかった。同部門では日本ハム加藤貴之投手(29)が1位だった。今季初めて規定投球回をクリアした技巧派左腕が、山本をしのぐ数字を出した。


今季の山本は圧倒的な成績を残した。5冠に輝いたことはもちろん、「WHIP」「QS率」「K/BB」といったセイバーの各項目でも1位と、文句のつけようのない内容だった。奪三振率9・57、与四球率1・86と、この2項目もレベルの高い数字。しかし奪三振率はリーグ1位だったが、与四球率は同3位。5冠投手が奪三振率、与四球率も1位なら59年杉浦(南海)に次ぐ快挙だったが、この記録には届かなかった。

山本を抑えて1位となったのが加藤だ。与四球率は平均が2・50~3・20、1・90以下で一流、1・50以下なら超一流とされ、山本も文句なしの数字だったが、加藤は1・26のハイレベルな数値で、両リーグトップだった。昨季までは通算2・71と平均レベルも、今季は最も多くて3四球が1度だけという安定ぶり(山本は4四球が1度、3四球が5度)。10月18日楽天戦で初完投を記録したが、その試合も無四球完封だった。日本ハムで与四球率が両リーグ1位は10年武田勝以来。技巧派で淡々と投げる姿は、先輩左腕をほうふつとさせるスタイルだ。

与四球率でリーグ1位だった日本ハム加藤貴之投手
与四球率でリーグ1位だった日本ハム加藤貴之投手

ちなみに、加藤と山本は今季1度だけ、5月12日(東京ドーム)に投げ合っている。山本は7回2失点(1四球)、加藤は7回無失点(0四球)で、加藤が白星。無四球で山本に投げ勝ったこの試合は、無駄な走者を出さない今季の加藤を象徴するピッチングだった。【多田周平】

<100イニング以上になると…>

100イニング以上に対象選手を広げると、加藤より四球を出さない投手がいた。105回で10四球の奥川(ヤクルト)だ。与四球率は1・00を下回る0・86をマーク。歴代の100イニング以上投げた投手と比べると、惜しくも10傑入りは逃したが、12位の好成績。20歳以下に限れば67年鈴木(近鉄)の1・37をしのぐ数値で、20歳以下で1・00を下回ったのは奥川が初めてだった。

◆セイバーメトリクス 米野球学会の略称「SABR(セイバー)」と測定基準を意味するメトリクスを組み合わせた造語で野球を客観的データで分析し、選手の評価を行ったり戦術を組み立てる試み。メジャーで浸透しているデータ指標。