大谷に沸いた今年のメジャーリーグ。米国駐在のMLB担当、斎藤庸裕記者が紙面には書ききれなかった今季の話題を振り返る。

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シーズン162試合の長丁場だからこそ、浮き沈みがあって面白い。エンゼルス大谷翔平投手(27)が後半戦で本塁打の量産ペースを落とし、日本人で初の本塁打王を逃したことは残念だが、最後までタイトル獲得レースを盛り上げた。

気合の入った表情を見せるエンゼルス大谷翔平(2021年9月25日撮影)
気合の入った表情を見せるエンゼルス大谷翔平(2021年9月25日撮影)

前半戦までに33本塁打を放ち、シーズン60発ペースでベーブ・ルース超えも見えていた。ブルージェイズのゲレロは前半戦で28本と射程圏内だったが、ロイヤルズのペレスは21本塁打。大谷とは12本も差があった中、最終的には48本塁打でゲレロとともにタイトルを獲得した。

この大逆転を果たして予想できただろうか。全米野球記者協会(BBWAA)のア・リーグMVP候補でファイナリストの3選手に食い込んだブルージェイズ・セミエンは前半で22本塁打を放ち、後半で23本を積み上げ、大谷に1本差まで迫った。対抗馬や伏兵、大穴まで登場したシーズン終盤。勝負は最後まで分からない-。それは日々の試合だけでなく、個人のタイトル争いも同じだった。

予想を覆したといえば、大谷の勝利数も当てはまるかもしれない。オールスター前までの前半戦は89試合。13試合の登板で4勝を挙げた。後半戦は73試合。単純計算なら2ケタ勝利は「ギリギリのラインか…」と勝手に予想していたが、6月4日のマリナーズ戦から負けなしの8連勝。あれよあれよと勝ち星を積み重ね、9月3日に9勝まで到達した。多くの人が「これはいけそうだ」と思ったに違いない。しかし、その後は打線との兼ね合いもあり、勝ち星はつかなかった。

エンゼルス対アスレチックス 打者を三振に仕留め、雄たけびを上げるエンゼルス大谷(2021年9月19日撮影)
エンゼルス対アスレチックス 打者を三振に仕留め、雄たけびを上げるエンゼルス大谷(2021年9月19日撮影)

大谷は開幕前、冷静な視点で長丁場のシーズンを捉えていた。「必ず(好不調の)波があるものだと思うので、その時にどうするかが一番、大事かなと思います」。打者では後半戦でもがき、投手では前半戦で制球が定まらず、6月30日のヤンキース戦では1回途中で降板した。盛り返すこともあれば、それが出来ない時もある。「だって人間だもの…」。詩人の相田みつをさんの言葉が思い浮かぶ。

マドン監督は大谷の今季初登板からDHを解除し、投打で同時出場するリアル二刀流で起用を続けた。登板前後も打者でフル稼働させたことも、驚きの1つだった。来年はどうなるのか。大谷の成績は? エンゼルスはPSに進出できるのか? 正直、予想は出来ないし、ふたを開けてみなければ分からない。だからこそ、面白みがある。【斎藤庸裕】(この項終わり)