20年1月からスタートした小谷正勝氏(76)の「小谷の指導論~放浪編」。最終シリーズ第4回は来季からDeNAのコーチングアドバイザーとして、「現場復帰を決めた理由」。
世の中の流れに逆行するかもしれないが、来季から現場に復帰することが決まった。この話をいただいた時、76歳のじいさんが今更、出しゃばって出ていかなくてもいいのではないかと思った。ご存じの方もいらっしゃるだろうが、2年前にもう現場に戻ることはないだろうと悟った。
巨人のファームで投手コーチを務めた19年9月3日、体調不良で昭和大学横浜市北部病院に入院した。検査の結果、胃と大腸にがんが見つかった。当時の私は「がん=死」と解釈し、生きて病院を出られないと覚悟したが、病院の先生や看護師のみなさんが支えてくれ、手術を経て、12月3日に退院した。
この2年で体調は順調に回復した。朝、夕方の自宅周辺の散歩やコラムの執筆。テレビで野球を見る毎日を送りながら、ふとこのままでいいのかと思った。やり残したことはないのか、今の自分に何かできることはないのか。自問自答を繰り返す日々の中、オファーをいただいた。
この話を受ける決意をしたのはDeNAだったからである。私は前身である大洋に67年ドラフトで入団した。また、三浦大輔監督を筆頭に、斎藤隆投手コーチ、木塚敦志投手コーチ、大家友和2軍投手コーチらは現役時代に切磋琢磨(せっさたくま)した間柄で、少しでも役に立てればとの思いも湧いた。
自分には野球しか取りえがないし、それも投手について、少しの知識があるのみである。野球界への恩返しとか大それたことは言えないが、DeNAの優勝のために力を尽くすことだけはお約束する。
いただいた役職は、「コーチングアドバイザー」である。ユニホームを着ることもなければ、ベンチにも入らず、投手陣、コーチへのアドバイスが主となる。三原代表にもお話ししたが、選手と話す時は1対1ではなく、必ず他のコーチにも入ってもらうつもりでいる。
今年のDeNAは最下位に終わったこともあって、苦しんでいる姿が目についた。低迷の理由はいろいろあるだろうが、来年のDeNAはやりようによっては優勝できる可能性があると断言する。「小谷は何を言ってるんだ?」と思われるかもしれないが、参加した秋季トレーニングでも思いは変わらなかった。
ここでは個人名は避けるが、たった4日間の参加でブルペン投球やキャッチボールを見て、「これは面白いな」と感じる素材に出会った。それと同時に、課題と修正すべきポイントもいくつか見えた。(つづく)
◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。10年で24勝27敗。79年からコーチ業。11年までセ3球団でコーチ。13年からロッテで指導し、17年から19年まで巨人コーチ。来季からDeNAのコーチングアドバイザー。