高卒2年目の巨人秋広優人内野手(19)が、持ち前の懐の深いバッティングで4打数4安打した。昨年はキャンプで活躍したが、オープン戦で失速。開幕1軍は果たせなかった。飛躍が期待される今季、何を求められ、何が課題点になるのかを分析した。

最後の第4打席は、長い両腕を器用にたたむようにしてライト前にはじき返した。高めのストレートに詰まってはいたが、追い込まれてからのバッティング。将来性を感じさせる安打だった。

巨人対ロッテ 8回裏巨人2死一塁、右前打を放つ秋広(撮影・河田真司)
巨人対ロッテ 8回裏巨人2死一塁、右前打を放つ秋広(撮影・河田真司)

第1打席はセンター前。第2打席はライト線へ。第3打席は三遊間をゴロで破った。どれも詰まり気味のシングルヒットではあったが、広角に打ち分けているところに、高卒2年目とは思えない素質の高さを感じさせた。

巨人対ロッテ 2回裏巨人2死、中前打を放つ秋広(撮影・河田真司)
巨人対ロッテ 2回裏巨人2死、中前打を放つ秋広(撮影・河田真司)

それでも期待が高い上でのジレンマが残る。宮崎キャンプでもフリー打撃を見たが、昨年より体は大きくなったものの、それほど技術が向上しているようには見えなかった。

秋広の打撃には改善したい箇所がある。トップの形を作ってから打ちにいくときに、わずかだがグリップの位置が背中側に入る癖がある。トップを作る時にグリップを動かすのはいいのだが、トップを作った後に余計な動きが入るため、どうしても差し込まれ気味になってしまう。この部分が改善していなかった。

長所と短所は紙一重で分かれる。秋広には懐の深さがあり、多少、詰まっても押し返せるスイングの強さもある。だからグリップが背中側に入って差し込まれてもヒットにできる。

しかし、「これでいい」と思わないでほしい。この癖が直れば速い真っすぐにも差し込まれず、ホームランは激増する可能性を秘めている。そしてもっと体が大きくなれば、とてつもないバッターに成長できる。そういう予感を感じるのは私だけではないと思う。

バッティングではないが、リードの小ささも気になった。2メートルを超える身長を考えれば、秋広のリードはベテラン選手の幅しかない。センターのポジショニングにしても、状況によってもっと大胆に守備位置を変える必要がある。2アウトで一塁走者をホームにかえしたくない場面でも、それほど深い位置にいなかった。外野経験も浅く、分からないのかもしれないが、これぐらいのセオリーは自分で考えて覚えてほしい。

「打撃の選手だから走塁や守備で細かいことを言うな」と思う人もいるだろう。しかし、ロッテ山口は秋広と正反対のズングリとした体形ながら、目いっぱいで秋広より広いリードをとっていた。高卒ルーキーの松川も、アウトにはなったがワンバウンドした球に素早く反応していた。

巨人対ロッテ 8回裏を終え、ベンチに戻り笑顔を見せる巨人秋広(撮影・河田真司)
巨人対ロッテ 8回裏を終え、ベンチに戻り笑顔を見せる巨人秋広(撮影・河田真司)

2人とも走力を売りにする選手ではないが、出てくる選手というのはどんなプレーに対しても貪欲さを持っている。打撃技術とは繊細であり、どんなささいなプレーでもおろそかにしない心掛けが必要。それが技術の向上につながると思っている。(日刊スポーツ評論家)