日刊スポーツの好評企画「解体新書」。かつて王貞治の1本足打法、大谷の二刀流、イチローの盗塁など、スーパースターの技術に迫ってきた。今回、大解剖するのは…ヤクルトつば九郎の「くるりんぱ」! 連続写真でポイントを本人(鳥)に聞いた。今まで成功率0%の世界最高難度の離れ業も、2000試合で成功する?(取材は7月上旬に行いました)

   ◇   ◇   ◇

まず(1)で見ているのは「すたんどのおきゃくさんのめせん」。ちゃんと見てくれているかチェックをしつつ、見られていると恥ずかしい乙女心(?)もあるとか。つば九郎を見ている時、つば九郎もまたこちらを見ているのだ。

次に確認するのは「きゅうじょうのはた」。バックスクリーン上の旗を見て、風向きをチェックする。そんな細かいところまで見ていたとは…。

(3)→(7)でヘルメットを投げる位置は「ななめうえ」。風向きによって、若干の修正を加える。なかなか高度な技だ。ヘルメットを持っているのではなく、両耳にある穴に「てばさきをひっかけている」(3)。投げる際には、後ろ回転をかけている。「どーむなら あてるじしんはある」((9)=最高到達地点)。

最後に(10)の決めポース。両羽を横にピンと伸ばす。ノルディックスキー・ジャンプのテレマークを意識していてつば九郎式の「てれまーく」。

大変なのは「へるめっとがかわること」。燕パワーユニホームの際は、ヘルメットも変わる。色が変わると、耳の穴の位置や重さも微妙な違いがあるらしい。そういう時は、優しい目で見守ろう。

(22)の失敗したあとに流れるあの音楽は、みんなおなじみ。実は、成功バージョンの音楽は作成済みということが判明した。その音楽は、演出担当のみが把握していて本鳥も知らないとのこと。みんなで聞ける日は、くるのだろうか…。

3~4年前から始まった「くるりんぱ」。5回のグラウンド整備中に行われるようになったのは、新型コロナの影響だった。それまでは内野席に向けてTシャツを丸めたバズーカ砲を撃っていたが、20年シーズン開幕当初は無観客。有観客になってからも、席の移動や密になることから再開は見送られた。5回裏のぽっかりと空いた時間。どうしたものかと悩む関係者。

「じゃあ くるりんぱタイムにします?」

つば九郎の提案がすんなり通り、いつの間にかコーナーとして確立。さらに「りくえすと」も自ら発案し、コーナーに厚みを持たせた。球場中、いや日本中、もしかしたら世界中の人も注目する人気コーナーとなった今。「あんまり きたい しないでください」。いえ、期待しています!【取材・構成=保坂恭子】(つづく)

○…5回のグラウンド整備の時間は、コロナ禍前は「バズーカ」タイムだった。つば九郎がデザインされたTシャツをスタンドに撃ち込む。その技術はとても高く、ほぼ狙ったところに撃てるという。「おりんぴっくできょうぎがあったら でられる」ほどの自信。無観客が続いた20年は動画でファンとつながる「リモートバズーカキャッチ」を企画し盛り上がった。球場では今年6月から、3年ぶりに復活。試合前に行われるので、こちらにも注目だ。

◆くるりんぱ ダチョウ倶楽部の上島竜兵さん(故人)の帽子芸。他の芸人にぞんざいな扱い方をされた時などに「訴えてやる!」と帽子をたたきつけてから「くるりんぱ!」と帽子を1回転させてかぶり直して終わるのが王道パターン。帽子がユニホームの野球とは親和性が高く、つば九郎以外にも、巨人ウィーラーがホームラン後のパフォーマンスで愛用している。

「あまりきたいしないで~。」と書き込んだフリップを手にするつば九郎
「あまりきたいしないで~。」と書き込んだフリップを手にするつば九郎