第104回全国高校野球選手権は、仙台育英(宮城)の優勝で幕を閉じた。日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)が、今大会のベストナインを選んだ。

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甲子園で夏の高校野球を取材するのは今年で2回目となった。プロ野球界に長く携わってきたからか、高校野球から感じる物が実に多い。

プロでは一定レベルの集団の中でレギュラーを争う。高校野球は個の力には開きもあれば、チーム力にもレベルの差がある。そういう違いがある中で、試合はそのレベルの差通りの結果にならない。そこに、一発勝負で甲子園にすべてをかけて挑む高校生が織りなすドラマがあるのだろう。

今回、私が見た選手からベストナインを選んでみては、という企画をいただいた。ほんの一瞬だけ、甲子園でのプレーを見ただけで、選手の力に序列をつけるのに抵抗感はあったが、私の主観をもとに9人を選ぶ作業に取り組んでみようと考えた。

何事も経験であり、同じ競技でありながら、高校野球とプロ野球では異なる部分もある中、選ぶ作業はとても難しいが、半面新鮮でもあった。

大会序盤は時間の許す中でテレビで、準々決勝と準決勝は甲子園でじっくり球場で見た。地方大会の情報はほぼなく、あくまで甲子園でのプレーを参考にした。基本ラインとして、準々決勝まで勝ち進んだチームから選ぶこととした。中には1、2回戦敗退チームから選んでいる選手もいるが、私の印象に残ったということも、ひとつの巡り合わせだと受けとめていただきたい。

<1>(中)浅野翔吾(高松商)

<2>(三)伊藤櫂人(大阪桐蔭)

<3>(捕)松尾汐恩(大阪桐蔭)

<4>(遊)戸井零士(天理)

<5>(左)海老根優大(大阪桐蔭)

<6>(一)賀谷勇斗(下関国際)

<7>(二)秋元響(仙台育英)

<8>(投)山田陽翔(近江)

<9>(右)赤瀬健心(下関国際)

まず浅野を1番とした。力量としては4番に間違いないが、大ブレークした衝撃のバッティングを「1番センター」で披露したことから、今大会を代表するスラッガーとして、高松商と同じ打順で据えた。

となると4番は?という問題が出てくるが、ここは2回戦で敗退しているが、戸井(天理)の広角に打てるバッティングを決め手にした。ホームランバッターではないが、確実に仕留めるシャープなスイングに魅力を感じた。

2番は総合力で伊藤(大阪桐蔭)とした。足、肩、打撃と非常に能力が高い。その大阪桐蔭を苦しめた藤田大輝(旭川大高)のバッティングにも目が止まったが、大阪桐蔭と互角に渡り合ったものの初戦敗退ということで、ここは伊藤を選んだ。

私がとても楽しみにしていた捕手だが、名前を挙げるなら3人。まず山浅龍之介(聖光学院)の感性豊かな配球は印象に残った。内角の使い方は理にかなった戦略が感じられる。投手の力量や、その日の調子に合わせた柔軟さ、判断力は課題だが、捕手としての感性はとてもいいものを持っている。

そして片野優羽(市船橋)。肩の良さに加え、守りながら走者の動きを把握している。走者への警戒を怠らない、ちょっとした異変に気づける。これは試合の重要局面で、走者への抑止力にもなる。また、ベンチで投手とコミュニケーションをはかる姿に投手を乗せる面も感じた。昨夏、市和歌山の小園(現DeNA)と接する松川(現ロッテ)にも似た印象だ。

最後に松尾(大阪桐蔭)。三塁の伊藤と同じで総合力で抜きんでている。常勝大阪桐蔭の先発マスクをかぶるということは、重圧も背負っているということで、強い精神力、強力投手陣を統率するリーダーとしての素養も感じられる。

5番は海老根(大阪桐蔭)。ここは他の追随を許さないところだろう。そして6番賀谷(下関国際)は、丸山一喜(大阪桐蔭)との比較で悩んだが、大会通しての打率を決め手とした。

7番セカンドの秋元(仙台育英)は、打席での雰囲気といい、決勝戦の5回の守備で見せたバックトスといい、非常に高いセンスを感じる。星子天真(大阪桐蔭)、松本竜之介(下関国際)の名前も浮かんだが、決勝で躍動した秋元の貢献度は大きい。

8番は投手山田(近江)。先発としては今大会最も投げ、エースで4番、さらに主将として完全燃焼したといえる。球威、スタミナ、精神的なタフさを考慮すると、1人選ぶとするなら山田ではないかと感じた。左ならば素材として前田悠伍(大阪桐蔭)が抜けている。

最後に9番右翼の赤瀬(下関国際)。大阪桐蔭戦、近江戦と、ことごとく大事な局面でヒットを打ったり、バント、スクイズを決め、俊足で先の塁をとった動きに、運動能力の高さを感じた。素晴らしい肩も備え、センターでは驚異的とも言える守備範囲。浅野をセンターに配置しているが、守備力では赤瀬もまったくひけを取らない。

最後に、右翼として清谷大輔(近江)の名前も脳裏をよぎった。バッティングが素晴らしい。これで守備力が抜けていれば文句なしで選びたいところだった。球際で確実に捕球するところなど、守備では課題がある。バッティングに非凡なものを持っているだけに、守備でも努力を重ねてほしい。

三好元気(聖光学院)もいいバッティングをしていた。ただ、仙台育英との準決勝で後逸した失策が痛かった。最後の最後にもろさが出てしまったのはもったいなかった。清谷も三好も2年生。来夏、甲子園で成長した姿を見せてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

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【イラスト】田村氏が選ぶ大会ベストナイン
【イラスト】田村氏が選ぶ大会ベストナイン