WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

グラウンドで投げ込む巨人戸郷(撮影・垰建太)
グラウンドで投げ込む巨人戸郷(撮影・垰建太)

“ポリバレント右腕”が侍ジャパンのブルペンを支える。巨人戸郷翔征投手(22)が第2先発にリリーフにと幅広い役割を全うする。巨人では昨季チーム最多の12勝を記録した若き右腕。長いイニングを投げるスタミナに加え、ルーキーイヤーの19年の日本シリーズ、20年の同シリーズ、21年のCSでリリーフとしてフル回転した経験がある。

きっかけはスタートダッシュ力だった。初回から150キロをズドンと突き刺せる出力を評価されてリリーフの切り札として抜てきされた。20年の日本シリーズではチームはソフトバンクに4連敗を喫したが、戸郷は3試合に登板して敢闘選手賞に輝いた。短期決戦でのリリーフ経験は、日本にとってプラスになる。

リリーフとして奪三振能力の高さも魅力になる。昨季は154三振でリーグ最多奪三振の初タイトルを獲得した。直球とフォークの組み合わせを武器に三振の山を築く。WBC球への対応も「だいぶ真っすぐも変化球もなじんできた。フォークもスライダーもだいぶ落ちてきた」と好感触を抱く。聖心ウルスラ学園(宮崎)時代には直球とスライダーが主体だったが、プロ入り後、20年の自主トレで山口俊に弟子入りしてフォークを伝授された。今や直球と落ち球の組み合わせが最大の武器になった。

戸郷の強化試合成績
戸郷の強化試合成績

日の丸を背負う日を心待ちにしてきた。年代別を含めても昨年11月の強化試合が初の侍ジャパン入りとなった。高校3年時には宮崎県選抜チームの投手として、小園(現広島)、根尾(現中日)、吉田(現日本ハム)らが選ばれたU18日本代表と対戦。5回1/3を2失点、9奪三振と猛アピールし、ドラフト6位でのプロ入りをたぐり寄せた。そこから約4年。WBCの本大会メンバー入りが決まると「自分が侍ジャパンの一員になれることを想像するだけでも身震いがしています」と心待ちにした。

憧れの存在とも初めての共闘となる。侍ジャパンで18番を背負う山本由伸は戸郷の兄悠大さんと都城高校の同級生。兄はラグビー部に所属しており、運動部同士で仲良し。山本から「一緒に野球しようぜ」と声をかけられていたが、戸郷は「お兄ちゃんと同じ高校というのがちょっと…」と聖心ウルスラ学園に進学した。中学時代には都城市内の銭湯でばったり遭遇したことも。球界のエースと縁があった。

22歳にして今季からは巨人の投手キャプテンも務める若きエース。与えられた役割を全うし、世界一へ羽ばたく。【小早川宗一郎】