WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

    ◇    ◇    ◇

ソフトバンク周東佑京内野手(26)に、侍ジャパン入りの一報が届いたのは昨年12月24日のことだった。「栗山監督から電話が来て『力になってくれないか』と言ってもらいました。『これがクリスマスプレゼントなのか、そうじゃないのかはわからないけど』とおっしゃっていました」と振り返る。「これが本当にプレゼントなのかは、大会が終わってからわかるのかなと思います。失敗して帰ってきたら、プレゼントじゃなくなってしまう。自分次第かなと思っています」と自身の置かれた状況を冷静に分析している。

19年11月、プレミア12オーストラリア戦で代走周東は源田のスクイズで同点の生還
19年11月、プレミア12オーストラリア戦で代走周東は源田のスクイズで同点の生還

与えられるであろう役割は「切り札」だ。「求められているところは足だと思う」とキッパリ言い切る。「足で準備するといっても、シーズン中と一緒かなと思う。出始めの時もそうでしたし。代走で行って守るというのは、レギュラーの選手ではできないというか、そこは慣れてないときついんじゃないかなと思う。そこを経験してきたというアドバンテージがあると思う」。育成ドラフト出身で、代走から今の地位まで上ってきただけに「スペシャリスト」の立ち位置にもひるむことはない。

日本代表としては、19年のプレミア12では主に代走として7試合に出場し、4盗塁で盗塁王。チームの優勝に貢献した。大舞台で輝けるメンタリティーを持っている。「プレミアとかよりも、日本シリーズ、CSの方が緊張した。あまり代表だからという意識は、多少はありますけど、やること自体は変わらない」と落ち着いている。

今大会の独自ルールで行われるタイブレークについても「タイブレークといっても、ただノーアウト二塁というか。無死二塁で代走で出たと思った方が気持ちは楽だと思いました。あまり意識しないのがいいのかなと思いました」。終盤での代走という場数を踏んできているから、サラリと言える。

周東の主な国際大会成績
周東の主な国際大会成績

WBCでは「足」が数々の名シーンを生んできた。周東も「川崎さんのホームインとか、鳥谷さんの盗塁とかが印象に残っています」と、06年決勝で「神の右手」といわれた川崎宗則氏の走塁や、13年大会での鳥谷敬氏の「伝説の盗塁」を挙げた。「できるかできないかじゃなくて、やらないといけないと思っている。そこは覚悟決めないといけないと思っています」と腹はくくった。周東の足から、新たな名場面が生まれそうだ。【山本大地】