記者席に座ってはじめて分かったことだが、スタンドの声援がある甲子園は、こうも迫力があるのかと感じた。21年から訪れているが、感染症対策として昨年までは声援なしか、録音での声援だった。

それが、プロ野球で応援に慣れているはずの私ですら、高校野球の一種独特の雰囲気に圧倒される。これが選手にどう影響するのかなと感じ、思い出したプレーがあった。

22日の東海大菅生-城東(2回戦)で予想外の場面に遭遇した。感じ方は人それぞれとは思うが、野球ファンの皆さんもどう感じるか、想像してほしい。

1-1の2回表1死二塁。城東の打者はワンバウンドを空振り三振。捕手がボールをはじき、走者はスタート。捕手は三塁に送球するもセーフ。振り逃げで1死一、三塁。ありそうなプレーと感じるかもしれないが、私には驚きだった。

この場面、捕手の判断がすべてになる。優先順は二塁走者を三塁で刺せるかどうか。刺せないと判断したら即座に打者走者にタッチするか、一塁に送球する。今回は三塁で間に合うと判断して1死一、三塁とピンチを広げ、セーフティースクイズで勝ち越し点を奪われた。1死一、三塁か2死三塁か。判断1つが大きな違いを生む。

塁が詰まっていれば振り逃げはない。三塁走者なら、捕手は向かってくる走者を待ち構えていればいい。つまり、無死か1死で二塁の時だけ、頭で整理しておかないと、誰もが陥る危険をはらむ。

単純に捕手のボーンヘッドとも言い難い側面を、このワンプレーに見た。私にとっては盲点だった。観客と大歓声が戻ったこの素晴らしい球場で、選手が本来の力を発揮できるよう、しっかり準備してほしい。(日刊スポーツ評論家)