今年も全国のドラフト候補を日刊スポーツが追いかける。速球派がそろう高校生では、生光学園(徳島)の最速153キロの川勝空人投手に注目。野手では攻守ともにレベルの高い花咲徳栄(埼玉)の石塚裕惺内野手(ともに2年)がプロから高い評価を受ける。

ドラフトファイル:川勝空人
ドラフトファイル:川勝空人

腕を振れば掲示板に「150」が点灯した。馬力を感じさせるフォームから放たれる生光学園・川勝の剛球にネット裏のスカウトも顔を見合わせていた。昨夏の徳島大会。徳島北との初戦で最速を更新する152キロを4度計測。準々決勝の強豪・鳴門渦潮戦では153キロに達した。

それに先立つ6月。ぐんぐん成長を続けていた川勝に「肩書」がついた。練習試合の多度津(香川)戦で150キロをマーク。四国の下級生投手が大台に達したのは、楽天にドラフト1位入団した済美(愛媛)の安楽智大以来、10年ぶりだった。「狙って出したわけではありませんが、150キロが出てから高卒でプロに行きたいと意識するようになりました」。川勝にとっても節目の瞬間になった。

入学を控えた中学3年の12月に右膝を骨折。高校入学後、ランニングや投球を再開したのは8月になってから。その時点では中学時代と変わらない138キロだったが、1年足らずで15キロ伸ばした。目標は155キロとしているが、あくまで1つの目安。「力感なく投げながらもアベレージを140キロ台後半になるように上げたい」と意識は高い。

現状に全く満足はしていない。昨年は夏、秋とも県4強どまり。味方や自分のミスで精神的にも乱れたという。「焦って気持ちが落ちてしまった。もっと周囲を見られるようになりたい。大切なところで集中できていないので、メンタル面の成長が必要です。他校と、そういうところの意識の違いを感じました」。新チームでは主将も担う。口数が多いタイプではないが、チームを勝たせるために自らの脱皮を誓っている。

OBの幸島博之(こうしま・ひろし)監督(43)にとってもめったに巡り会えない素材だ。「プロの世界に行かないといけない選手。放っておいても高校のうちに155キロ、156キロは出ると思う。1球だけじゃなくコンスタントに球速が出るのがいいところです。課題はありますが、細かい部分はプロの方々にお任せして、粗削りのまま送り出したい」。その言葉にも素材の良さが表れた。

徳島に3校ある私立高校の1つで、唯一、硬式野球部があるが甲子園出場はない。全国で私立が甲子園に出ていないのは同県だけ。「勝てる投手になりたいです。学校の歴史を変えたい」。個人、学校にとって大きな意味を持つ2024年になる。【柏原誠】

今年の主なドラフト候補
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