野球取材の現場は無数にある。いつもと違う場所に「何かのご縁なので」と行ってみる。今回のご縁は東京新大学野球リーグ。公式記録の訂正おわびメールがよく届く。その文面がとても律義だ。発信主は「学生委員長 鈴木青空」。どんな人物なんだろう。
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春季リーグ戦中の公式記録で、勝ち投手の訂正があった。報道各社にこんなメールが届いた。
「今季多くの訂正をしており、私の確認不足で大変申し訳ございません。公式記録担当にも重ねて確認するよう伝えてきましたが改善できていないため、今後は責任審判を交えて判断し、皆さまにご迷惑がかからぬよう努めてまいります」
完璧な人なんていないから「おわびして訂正します」だけでも世の中は回る。それだけで済まさずに誠意を懸命に表現した文面に今のところこの春一番、心をうたれている。
杏林大・鈴木青空マネジャー(4年=桜町)は「監督さんにも『マネジャーの仕事は1つのミスも許されないよ』って指導を受けてきてるので。迷惑をかけて申し訳ない気持ちが勝ります」と神妙だ。勝手に男性だと思っていたが「青空で『せいら』と読みます」という快活な女性だった。
東京新大学リーグは学生が運営する。予算策定などは大人の仕事だが、公式戦の業務は「ほぼ100%、学生ですね」という。だからメールで発信した改善内容も文面も全て自主判断だ。彼女はこの日、第1試合は自校の記録員でベンチ入り。得点時にはイェイイェイと右腕を突き上げ、試合が終わると本部席へダッシュ。記録の照合の合間に、自校の弁当手配や審判への対応も行う。
鈴木マネは三塁打と判断したが、公式記録担当は安打+失策と判断したケースがあった。協議の末「あれは失策では?」との声が優勢に。鈴木マネは打者本人に電話し「それでいいよ~、みたいな感じで」と一件落着。その後もスリッパ音をパタパタ響かせながら舞台裏を駆け回り、第2試合が始まっても昼食をとる時間さえ見つからない。
東京6大学や東都リーグのような知名度はなく、普段は日刊スポーツ紙面でも片隅に結果が載るだけ。本音を聞くと「…寂しいですよ」と言葉を選ぶ。
「マイナーリーグなので普段はなかなか取り上げてもらえない部分もあると思うんですけど、有名なリーグとはまた違った選手たちの姿っていうのも東京新にはあると思うので、もう少し見てほしいなっていうのはあります」
東京新の唯一無二の魅力は? 尋ねると鈴木マネは「うーん」と腕を組み「なんだろ?」と隣の学生に尋ねた。「応援じゃない?」「あ、そうだね。自由な応援はそうだね」「自由すぎるね、たまに不安になるくらい」と会話が弾む。
両校の応援席にスピーカーが置かれ、選手登場曲や応援歌が流される。流通経大のこの日の応援部員は3人だけ。スマホを操作し、今秋ドラフト候補の小林世直内野手(4年=津田学園)の打席で流したのは「ジ・エンターテイナー」。給食の時間に流れそうな有名ピアノ曲だ。橋本泰知君、藤田英志君、金子椋也君の2年生3人が踊り、曲とともにゆる~い空気を飯能市民球場に作り出す。
楽しい応援をすると、相手の杏林大側から「いいぞいいぞ、流経大!!」とコールが来る。「闘魂込めて」「六甲おろし」も替え歌せず歌い、どこか宴会っぽさもある応援合戦だ。「優勝かかるとヤジ合戦になって歯止め利かなくなって。やめろ、って言います」と姉御肌の鈴木マネ。大学生らしい強烈なエネルギーに満ちた空間は、かなり楽しい。また秋に行きたい…じゃなく、行く。【金子真仁】(この項おわり)






