楽天三木谷浩史会長兼オーナー(53)が、余すところなく語ります。球界再編問題を乗り越え、2005年(平17)シーズンから参入。イノベーター(革新者)の精神で平成後期の球界に息吹を吹き込み、13年に日本一を達成しました。来年のオーナー会議では議長を務める大物が、平成最後の年の瀬に何を思うか。

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僕は元来、楽天的な人間です。苦労を苦労とは、あまり思わない。「これは面白いね。創意工夫のしがいがある。どうやる?」。そんな気持ちがあったから、時間のない中で新規参入が出来たんだと思います。

ユニホームもなく、拡張ドラフトもなく、スタジアムは老朽化して使い物にならない…3カ月で始めなさいは、無理があるなと。関連会社や、スタジアムを建設してくれた鹿島さん。今だとブラック企業と言われるくらい死にものぐるいでやって、立ち上げることが出来た。素晴らしいなと。

それにしても、もうちょっと勝てるかなと思いました。1年目の2005年(平17)はほぼ100敗、97敗という現実を突きつけられて。「あぁ、これは大変だな」と感じました。9年目の13年に日本一になれて、でも(田中)マサヒロがアメリカに行っちゃって。またやり直しみたいな、今はそんな状況です。

リーグ優勝は13年の9月26日、当時の西武ドームでした。星野監督の後、グラウンドで胴上げをしてもらいました。「いつか、そんな日が来たらいいなぁ」と思っていたことが現実になった。あの時は父が、アメリカに行って(膵臓=すいぞう=がんの)治療をしなくてはならないタイミングで。「よく勝ってくれたな。ありがとう」の気持ちでいっぱいでした。

父はその年の11月、死去しました。星野さんにも最後に…皆さんには公表してなかったですけど、ずいぶん長いこと闘病しながら、副会長もやってもらっていて。「悪いなぁ」と思う半面、ご本人の生きるモチベーションを考えながら、やっていました。

何とか優勝して「最後の最後まで、いい思いをさせてあげたいな」と。昨年は夏ぐらいまでぶっちぎりの1位でしたが、夏場以降、急激に減速。申し訳なかったとか…いろんな感情が、お別れの会での涙になったんだと思います。

失速の原因を考えました。気持ちの面もあるとは思いますが、やはり敵のあること。相手も研究をしてくる。そこに対する二の矢、三の矢を放てなかった。例えば主力打者が、内角を厳しく攻められていく。どういう手を打つかの「準備」が足りなかった。後は単純に、安定的に上位にいくための「総合力」が足りませんでした。

投攻守に走。4拍子そろっていないと勝てない時代に突入しています。そこに、モメンタム(勢い、推進力)を乗せる。モメンタムで乗り切れることもあるんですけど、上位にいっているソフトバンク、西武は総合力がそろっている。

それは、どういうことだろうと突き詰めていくと、やはり「意識」だと思うんです。次の塁を取る意識。僕が現場に言ったのは「走者一塁でライト前にヒットを打って、三塁まで行く確率が、ウチはどう考えても低い」と。そういう、基本的なことさえ甘い。正直に言って、出来ていなかった。もっと科学的、かつ論理的なアプローチが必要になる。来季で創設15年目ですが、新しい野球になるんじゃないかと期待しています。(つづく)【取材=宮下敬至】

インタビューに応じる楽天三木谷オーナー(撮影・河野匠)
インタビューに応じる楽天三木谷オーナー(撮影・河野匠)