第100回を迎える夏の甲子園の前に高校野球について聞く「著名人インタビュー」編のラストを飾るのは、NMB48キャプテンの山本彩(25)です。アイドルグループからの卒業を宣言した山本彩ですが、随一の野球好き。高校野球の魅力を語ってくれました。【取材=磯綾乃】

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 高校野球を好きになったきっかけは、06年の早実・斎藤佑樹投手(現日本ハム)と駒大苫小牧・田中将大投手(現ヤンキース)の投げ合いです。夏休みに家のテレビでお父さんがたまたま見ていたと思うんですが、衝撃というか、感動的な試合でした。ひかれない人はいないだろう、と。その時は高校球児より年下だったので、1つのことに向かっていく球児たちがかっこよく見えて。刺激を受けて、泣いたんですけど。高校野球ってこんなにドラマがあるんだと知って、一気に好きになりました。

 NMB48に入る少し前に初めて甲子園に行きました。アルプスで見たんですが、球場の雰囲気に興奮しっぱなしでした。春夏毎年のように行っています。リクアワ(NMB48のライブ)が終わった後に、次の日の朝から行ったこともあります。プロ野球はシーズンが長く続くけど高校球児の一瞬にかける気持ちは他とは比べられない。1試合1試合、死にものぐるい。試合終了間際にゲームが転がったり、がむしゃらな姿に胸を打たれる。自分が高校球児より年上になってからのほうが、私もそうじゃないとあかんな、と思わされますね。諦めない姿勢を教えてくれるし、半分は親心というか、勝っても負けてもどっちも勝利。勝負事なので決まってしまうけど、それだけが全てじゃない。球児が教えてくれることです。

 NMB48の後輩と高校球児は重なります。例えば選抜メンバーが野球のレギュラーで、公演に出られない子はベンチメンバー。野球の場合でも、レギュラーが出られなくなった時に力になってくれるのが控えの選手です。キャプテンの気持ちはめちゃくちゃ分かりますね。一声でチームの雰囲気が変わる。声掛け、みんなへの気配り、大事だなと思います。

 高校野球の大会が始まると、ノートを付けています。雑誌を買い集めて比較しながら、高校の特長、強み、注目選手を書き出していきます。投打のレーダーチャートを付けて、この高校は投手が強い、盗塁の数が多いとか。当たらないこともありますが、それもいいところだと思いますね。奇跡というか、試合の雰囲気で展開が大きく変わるのも、プロ野球にはない高校野球の魅力かな。紙面のデータだけでは分からないものがあります。

 最近、阪神の「TORACO(トラコ)応援隊長」に就任してから、握手会でもユニホームを着てきてくれる方が増えました。100回と聞くと、教科書に載ってもいいくらいの歴史。自分が見てきたものなんて、ほんの一部です。次の100回に向けて、自分ができることがあるとするなら、魅力を発信していくこと。TORACOにならせてもらっているので、そういう役割が私にはあるのかな、と。

 とにかく、プレーする人が資本なので、選手だったり、関係者にとって一番やりやすい環境を、常に高めていってほしいです。

 ◆山本彩(やまもと・さやか)1993年(平5)7月14日、大阪府生まれ。10年創設時からキャプテン。16年末の紅白選抜で指原莉乃を抑え1位。趣味はギターと野球観戦。小学時代から高校野球ファン。愛称「さやか」「さや姉」。