ヤクルト奥川は2回2/3を3失点で、2死満塁としたイニング途中でマウンドを降りた。球数がちょうど60球になったことでの降板だろうが、何か割り切れない感じがしてしまった。

3回途中で降板するヤクルト奥川(中央)(撮影・中島郁夫)
3回途中で降板するヤクルト奥川(中央)(撮影・中島郁夫)

故障がちな体質を配慮したのだろう。しかし、2死を取っているのだし、もう1人ぐらいは投げさせてもいい。四球で満塁のピンチを招いた後の経験を積ませるのもいいし、力尽きて打たれてしまうのも仕方ない。自分に何が足りないかを勉強させるのが、一番大事なこと。もちろん、自らの手でピンチをしのげれば、それが自信にもなる。この時期のオープン戦で、まだ最長で2イニングしか投げさせていない投手を先発で起用する意味は何なのか? 勝ち負けにこだわっているわけでもないだろうし、開幕ローテーションに入れるつもりはないだろう。それなら、経験を積ませることを優先してほしかった。

技術的な部分でいうと、左肩の開きが早い。上半身の突っ込みが早いから軸足に体重を残しておけず、踏み出した左足がつま先から着地してしまっている。これでは下半身を使った投球はできない。

先発で登板し力投するヤクルト奥川(撮影・中島郁夫)
先発で登板し力投するヤクルト奥川(撮影・中島郁夫)

だからシュート回転してしまう。シュート回転しても抑えられるようにしたいのなら、右打者への内角を厳しく攻める制球力が必要だが、この試合では内角を狙って狙い通りに1球も投げられていない。曲がりの大きいスライダーを生かすなら、内角を攻める必要があった。

捕手からすると、内角を攻めると甘くなる確率が高く、怖くて攻められないのだろう。しかし現時点の実力で、プロの打者は抑えられない。内角を厳しく攻められないのなら、体を開かずにシュート回転しない直球を投げられるようにしないといけない。甘くいっても打たれないように球速を上げるでもいい。それを勉強させてやるような配球ではなかった。

ケガに配慮することは大事だが、あと1人を投げさせずに降板させていたら、実戦で投げる意味は半減する。故障がちならば、なぜ痛くなるかを考え、フォームを改造したり、肉体を強化すればいい。プロの壁を破るためのチャレンジを試みてほしいし、させてもらいたい。(日刊スポーツ評論家)

1回表中日2死二、三塁、平田(右)に3点本塁打を浴びた奥川(撮影・中島郁夫)
1回表中日2死二、三塁、平田(右)に3点本塁打を浴びた奥川(撮影・中島郁夫)