プロ野球だけではないかもしれませんが、新入団選手会見というものがあります。過去、ある球団のエラいさんは「毎度毎度ひな壇、金びょうぶの前って芸がないんだよ。なんか考えなさいって言ってるんだよ」とブツブツ文句を言っていたこともありました。

 実際、最近ではファン感謝デーで新入団選手をお披露目したり、いろいろと企画しているところもありますが、がんとして変えないところもある。その代表格が阪神かもしれません。

 系列の高級シティーホテルで、監督を中心に全新人が壇上に上がって自己紹介する。まあ、これはこれで分かりやすくていいかもと思ったりするのですが。

 ともあれ、12月4日は阪神のそれでした。ちらりとのぞいたのですが、今回、目立ったのは球団として、過去に成功した選手の背番号、あるいは存在が大きいとされる背番号をつける選手が多かったことかもしれません。

 エースナンバーといわれる「18」をドラフト1位の馬場皐輔投手(22=仙台大)がつけることが決定。また同2位の高橋遥人(22=亜大)が井川慶氏で知られた「29」を背負います。赤星憲広氏の「53」も復活しました。

 そんな中、おもしろいなあ、と言っては失礼ですが自身がつけた2つの背番号が一気に復活した人物がいました。

 現在は球団広報として活動する二神一人氏です。

 09年のドラフト1位で法大から入団した際にはエースナンバーの「18」をつけ、ケガもあり、思うような投球ができずに苦しんだ現役時代途中に「66」になりました。今回、その「66」も同6位の牧丈一郎投手(18=啓新)が背負うことになったのです。

 新入団発表の会場にいた二神氏と少しだけ話しました。「特に18番は大きいですからね。重圧もあるでしょうが阪神の18番は馬場だ、と言われるようにやってほしいですね」。そう話しました。

 ちゃんと話してはくれましたが、本人としてはやはり複雑なよう。最初は「だからボクのことはいいですよ~」となかなか話してくれなかった。それでもナイスガイで知られるだけに「こんな感じですかね」とコメントしてくれました。

 この世界に入ってくる人物なら、だれでも活躍して成績を残して、ビッグマネーを手にして、と思います。それは当然。しかしほとんどの選手はそれがかなわず、消えていくのも事実です。

 二神氏のように球団の仕事に関われるケースも、それほど多くはありません。苦労していた彼の現役時代を少しは知るだけに、現在の活躍をひそかに応援しています。

 12月になりました。今年はよかったなと思える人もいれば、失意のうちに暮らしている人も少なくないと思います。

 入団発表という晴れの舞台で、プロの現実と、たとえ思うようにいかなくてもしっかり働いている人物に触れ、なんだか人生に力を得るような気もするのです。