「かぼ天の店なかそね」。星野仙一さんの思い出を語る仲宗根さん
「かぼ天の店なかそね」。星野仙一さんの思い出を語る仲宗根さん

沖縄に来ると必ず行く場所は少なからずある。昨年からそれが増えた。宿泊している沖縄市の「かぼ天の店なかそね」だ。名物サータアンダギーの店だが他のものとは味が違う。沖縄名物に慣れている人も初めて食べると「これは?」と驚く。甘さがさわやかで、しっとりしている。

以前から中日がキャンプを張る北谷球場で関係者に出されていた。しかしもっとも気に入っていたのが星野仙一だったということは昨年、知った。しかも自分の泊まるホテル近くにある店という。あわてて出掛けた。そのとき2代目の仲宗根太志(63)に話を聞き、当欄で紹介した。

今年も出向いた。去年はどうも。すると仲宗根が言う。「あ~。あれ。反響ありましたよ~。みんなインターネットで載ってたよって言ってくれて」。

誰かにコラムを読まれ、どうこうという話は手前みそなので書かないようにしているのだが、さすがに「ほお」と思う。星野と面識があった仲宗根がうれしそうに言う。

「あらためて星野さんはみんなに好かれていたんだなって。女性にもモテていたし。変な意味じゃないですけど。だからああいう記事が出るとみんなうれしいんでしょうね」。そう言われると、こちらもうれしい。

その星野は新指揮官・矢野燿大を「テル」と呼んだ。矢野の名前のどこに「テル」がある? そう、矢野の本名は「輝弘」だ。09年のオフ、登録名を「燿大」に変更した。読みは同じ「あきひろ」。同年の開幕から故障したことなどで心機一転を図った。引退後もそのままだ。

矢野 もともと「輝弘」で「あきひろ」とは読みにくいんだけど。最初に「テル」って言ったのは山本昌さんかな。そこから星野さんも「テル」って呼んでくれて…。

星野は選手を下の名前、あるいはニックネームで呼んだ。この世界、そういう人は多いが特に星野はムードを作ろうとしていた。怖さの中の親しみやすさだった。

そして矢野。こちらも選手を名前で呼ぶことがほとんどだ。そして今、星野以上に自主性を前面に押し出させる雰囲気づくりに努める。だからキャンプは明るい。

この日の紅白戦もそのムードが出ていて楽しかった。もちろん自主性、明るさだけでは戦えないときが来るかもしれない。それでも第2クール終了時点でチームのムードは悪くない。「なかそね」のサータアンダギーのように、ほどよく甘く、おいしく。何よりファンを喜ばせる仕上がりを待ちたい。(敬称略)

紅白戦を終え選手の前で話す矢野監督(撮影・清水貴仁)
紅白戦を終え選手の前で話す矢野監督(撮影・清水貴仁)