オリックス・バファローズが見事日本一に輝き、球界の話題は人事、そして秋季キャンプへと移ります。これも毎年、変わらない野球ファンの楽しみでしょう。

そして虎党は言うまでもない15年ぶりに復帰した指揮官・岡田彰布氏の動向に大きく注目しています。2日からは3年ぶりとなる秋季安芸キャンプがスタート。関西を中心に、この話題がメディアをにぎわせることでしょう。

それにしても神宮球場で22年の戦いが終了となって、思い出すのは27年前、95年10月のことです。

岡田監督が現役の引退会見を行った場所を覚えているのは、なかなかのオールド・ファンかもしれません。

85年の阪神日本一V戦士としてはあまりにも有名ですが現役最後の2シーズンはオリックス・ブルーウェーブで過ごしました。

その2年を終えた岡田選手は同27日、オリックスが東京での宿舎にしていたホテル「ブルーウェーブイン浅草」で引退会見を行ったのです。

オリックスは前日までヤクルトと日本シリーズで対戦していました。「がんばろうKOBE」の旗印の総仕上げ、と日本一に挑みましたが知将・野村克也が率いるヤクルトに1勝4敗で敗れた直後です。シリーズで岡田選手の出番はありませんでした。

神宮でのナイターだったのでその夜は東京泊。そして翌日、岡田選手が引退会見を行ったのです。

「阪神で14年間、お世話になり、いろんな経過があってオリックスに来て、また2年間お世話になって。セ、パ・リーグ両方で優勝が経験できて幸せでした」 そう言った岡田選手が涙を浮かべるシーンを初めて目にしました。阪神を去る際の会見も泣いていましたが、それはテレビで見ただけ。

泣く岡田選手の姿に生で触れ、意外と言えば失礼ですが、あのひょうひょうとした様子からはうかがえない熱さというか、野球にかけてきた男の内側を垣間見たような気がしたのです。

岡田選手は95年、故障でファームにいるとき、自発的に若手に打撃などを指導していました。その部分を球団フロントは評価していたのです。「若い人を教えるのは楽しい」。岡田選手自身も引退会見でそう話しました。思えばそこが指導者としての始まりだったのかもしれません。

「指導者・岡田」の原点は「がんばろうKOBE」-。そんなことを思えば、また新たな期待も生まれてくる気がします。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)