今シーズン94試合目。ついにタイガースが借金返済に成功した。開幕9連敗からスタートし、最大16もあったマイナスを時間かけて減らしていった。勝率5割。これでわずかにあるヤクルトへの挑戦権を獲得。さらにAクラス争いに胸を張って挑める。いつまでも返済できない身としては、本当に阪神の姿、うらやましく思っている。

ここから球宴ブレークで、いよいよ後半戦に突入…といっても、試合の消化数は半分どころでなく、残り49試合。首位をにらむには絶望的な少なさだけど、2008年の例がある。あきらめずに戦うことだ。

そんな状況で迎える7月終盤。日々の戦いとは別の話題が、ようやく表に出てくるタイミングになったのでは…。次期監督問題は、待ったなしのところまで来ている。ドラフト、戦力構想、外国人問題、コーチ陣の処遇。早くとりかからないと、本当に時間がなくなる。当然、球団も水面下で動いているだろうし、8月から新体制作りに向けて、スピードアップされる。

そういうことを考えながら、僕はひとりの投手のことを思っていた。果たしてどうしているのか、藤浪晋太郎よ。阪神の逆襲のシナリオに藤浪の出番はない。監督、矢野はまだまだ1軍に呼ぶ考えを示していない。炎天下、2軍で藤浪は投げている。そして、ある程度の結果を残している。それなのに「需要と供給」のバランスが悪すぎる。

今の1軍の先発スタッフ。青柳、伊藤将、西勇、ガンケル、ウィルカーソン、才木とガチガチに固まっている。それならリリーフで、といっても、こちらも入り込むスキなし。需要がないから、いまの場所にとどまっているしかない。

表現は悪いが「飼殺し」状態に近いのでは。これから先、残り少なくなり、シビアなゲームが続けば、試す余裕はなくなる。となれば藤浪の1軍というのは厳しく、近くて遠い場所。それが現実なのだ。

夏の甲子園の季節になると、藤浪の存在感を懐かしく感じるのだが、これから彼をどうするのか? 課題を克服するのを待つのか、このオフ、トレードの目玉として考えるのか。正直、ギリギリの選択の時を迎えようとしている。

でも、これも新体制が決まらない限り、動きは取れない。矢野は時間をかけて「待ち」の姿勢を崩してこなかったけど、シーズンが終わればチームを去る。では次に監督に就任するX氏がどんな評価なのか。これによって、藤浪の来季以降は決まる。ところがこのX氏がはっきりしない限りは、球団もうかつに動けない。

もし藤浪が本当にトレード候補になれば、そりゃ他球団から数多くのオファーが舞い込むに違いない。仮定の話で申し訳ないが、藤浪と釣り合う選手となれば、それなりの戦力になるはず。吟味して、よりチームに有益な方法を考えるにも、進めようがない。

根強いファンが多くいて、藤浪が1軍で再び輝きを取り戻せば、それが一番の解決法だが、そのチャンスさえもらえぬ諸事情がある。これまた仮定の話で恐縮だが、借金まみれになり、今季をあきらめる展開になっていたら、藤浪は1軍で投げる機会を得て、新たな道が見えたかもしれない。ところがAクラス入りが濃厚になっているのが、逆にもどかしい状況を作るという笑えぬ話。こんな時、藤浪ひとりに関わっている場合ではない。だから、7月の終わり、藤浪を思ってしまうのだ。

ネットの世界で、例えばビッグボス新庄がラブコールを送っているとか、巨人も色気があるとか、その類の情報が流れているが、信ぴょう性は定かではない。ただ、そういう話題がうわさ話になって出てくること自体、藤浪の立ち位置はギリギリなのか…と感じてしまう。早く新監督を決め、来季に向けて進んでいくべきところは進んでいかないと手遅れになる。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)