夏の終わりだ。今シーズン最後の甲子園でのTG戦が終わった。伝統の一戦といっても、まさかの3位と5位での戦い。寂しい限りだ。ただ挑戦は終わっていない。クライマックスシリーズ(CS)進出の権利が取れるのか。それも2位進出か、3位なのか。はたまた広島、巨人にまくられて、Bクラス転落の可能性も十分にある。タイガース、気を張りつめる残り試合になる。

一方で来季に向けた戦力構想はどうなるのか…という心配がある。監督、矢野の退任は決まっている。しかし後任監督に関してネットではざわついているが、スポーツ新聞ではどこも沈黙を保ったまま。大事な残り試合、最後まで戦いを見守るといったところなのだろうが、進めなければならぬ事柄は多くある。

差し迫ったところではドラフト。今年のドラフト会議は10月20日に開かれるが、チームがこのままCSに進出すればファーストステージは10月8日から。それをクリアし、セカンドステージも勝ち抜けば、日本シリーズだ。今年は10月22日から開催ということで、仮にここまで進めば、ドラフト会議は新監督抜きでの参加になるのか。そんなことまで、気になっている。

ドラフトまで1カ月半。戦力分析、構想は球団の領域といえど、監督の意向が反映されるのが通例。だから水面下で、内定している新監督の考えを聞く段取りはつけていると思うが、さて、皆さんなら1位は投手? それとも野手? 異例の形で阪神は注目の1位を決めることになる。

「投手は何人いてもいい」とはほとんどの監督の本音なのだが、阪神がいま求めるのは、将来性十分の右のホームランバッター。僕はこの一択だと考えている。現状、佐藤輝、大山はいるが、ホームランを打てるのはこの2人だけ。そのため、2軍の井上に期待がかかったが、故障などもあり伸び悩み中。甲子園を本拠にしているという条件下、絶対に右の長距離砲が必要。となれば大学にも候補はいるが、やっぱり夏の甲子園を騒がせたこの若者。高松商の浅野に触手が伸びる。

他球団も1位に指名するだろう。競合覚悟での指名になるけど、それだけの素材ということは、多くの関係者が認めている。もし阪神が指名権を得たら、覚悟を持って、ヤクルトが村上を育てたように、それを習ってもらいたいと思っている。

3冠王に突っ走る村上について、かなり以前、小川淳司と話したことがある。監督、そしてGMとして村上の育成に携わった小川は守りについては、目をつむることに決めたと大方針を決定した。「村上の打撃、これをとにかく伸ばすこと。それは実戦を通してのことだが、当然、守りにつくわけ。そこでミスが出る。それも仕方がない。それよりバッティングなんだ。大きく育てることにこだわったし、それが球団としての決め事」。これが実り、22歳の平成初の3冠王か、という段階になっているわけだ。

佐藤輝、大山はともにドラフト1位だが、大学出身。阪神で高卒ドラフト1位の大砲といえば、まったく存在しない。掛布はドラフト6位入団で、過去30年、高卒1位の野手で大成した選手は1人もいなかった。それは阪神のドラフト戦略で、社会人、大学の即戦力ばかりを指名してきたからで、今年は2018年の藤原(大阪桐蔭=ロッテ)以来の高卒1位の野手指名があるかも。

まあ誰を指名するかは、ふたを開けてみないとわからないけど、夢あるドラフトにしてほしいものだ。その夢のクジを誰が引くのか? 本当にこれが気になって仕方ない。矢野が引くわけにはいかないし、そこが新監督の初仕事になるのか。この際、日本シリーズで矢野が最後のタクトを振り、一方で新監督が来季に向けてスタートする、なんてことになれば、前代未聞、見てみたいものだ。

まあ浅野を指名しても競合必至だし、獲得できる保証はない。それでも取らぬタヌキの皮算用、新監督ともども、想像するのが楽しくなる。(敬称略)