正真正銘、頼れる「4番」になってきた。そう、阪神の大山悠輔のことだ。ここ最近の見事なバッティングはほれぼれする。どの打席も期待感にあふれ、何かが起きるといった空気に包まれている。

こと打撃に関しては、常に辛口の岡田彰布も、大山についてはノー文句。絶大な信頼を寄せている。「そうよ、堂々とした4番になることよ。以前のように下手に小技を使う必要はない」。評論家時代、岡田は大山に対し、不満を持って見ていた。それは器用さゆえの打撃スタイルがあったからだ。

逆方向への打球が多くあった。これが気に入らなかった。「引っ張れるボールを、なんで無理して右方向に打つんやろ? そんなん、思い切って引っ張ればいいだけのことやのに」。

それがいまは見えなくなった。先の広島戦で初回、豪快に引っ張った打球は軽々とレフトスタンドに届いた。ファーストストライクから振る積極性。それもタイミングがドンピシャ。飛ばないわけがない。明らかに打球方向が変わった。時に右中間もあるけど、ほとんどが左方向。4番らしい引っ張りの打撃が光る。

それでいてホームランはまだ3本。4番としては少ないけど、気にすることはない。なにせ甲子園を本拠にしているのだ。神宮や横浜とは違う。先日のヤクルト-DeNA戦で両チームで11本の本塁打が乱れ飛んだが、打撃が売りのチーム同士。分からぬでもないが、神宮球場というのがキーになっている。ホームランの出やすい球場だし、横浜スタジアムも東京ドームも同様。これらを本拠地にしていたら、本塁打王のタイトルには近くなる。

改めて調べてみた。最後に阪神の選手がホームラン王に輝いたのは? それは1986年、2年連続3冠王になったバース(47本塁打)。以来、36年も阪神からホームランキングは現れていない。

バースの頃、そして掛布雅之の時代は甲子園の両翼に「ラッキーゾーン」が設置されていた。だからまだホームランは出やすかったが、これが撤去されて以降、甲子園は本塁打が出にくくなった。おまけに右から左に吹く浜風がある。それでもキングに挑んだ4番はいた。それが金本知憲。「オレは浜風とケンカする」と挑んだ2005年。大台40本に届いたが、それでもタイトルは取れなかった。

36年という長い空白…。それを埋めるように大山には期待したいが、それは無理難題を押し付けるようなもの。大山には別のタイトルに目を移してもらいたい。それが「打点王」だ。頼れる4番はやはり打点が多くなければ。阪神では2014年のゴメス(109打点)以来となるが、その前には2011年の新井貴浩(93打点)、それより前は2005年の今岡誠(147打点)。大山はここ最近、4年連続でチーム最多の打点をマークしているが、まだ3ケタの数には届いていない。ここは最低でも100打点超え。これをクリアすればタイトル争いはできるし、何よりチームの「アレ」のためになる。

甲子園ゆえのターゲット。大山にはさらなる追い風がある。1番近本、2番中野の出塁率の高さがそれ。4番が打席に立つ時、塁上に走者がいる確率は極めて高い。今シーズンはそういう形が続くと思われる。

岡田は決めている。1番、2番、そして4番はこのまま不動。代えるつもりはない。「ウチの4番、5番(佐藤輝)は打点よ。そこを目指せばいいのよ」。クリーンアップといえばホームラン。そういうイメージがつきまとうけど、こと甲子園では打点に力点を置くべき。それこそが甲子園の戦い方ということになる。

大山自身の最多記録は昨年の87打点。まずはこれをクリアして、100打点越えに。そうなればチームとして最良の形になる。好漢・大山悠輔、打点を稼ぐ4番を確立してもらいたい。【内匠宏幸】(敬称略)