振り上げた拳を下ろすのに、時間はかからなかった。先のDeNA戦での、阪神監督、岡田彰布の猛抗議。詳細はすでにご存じだと思うが、二塁ベース上で起きたタッチプレー。アウトかセーフか。そこに走塁妨害では…という要素も入ってきた。

結果、審判の判断はアウト。妨害は認められないとのことだった。それで岡田が疑問をぶつけた。許される抗議時間の5分。いっぱいいっぱい使っての抗議にスタジアムは大いに沸いた。

翌日、試合前のメンバー交換の時、岡田は審判団と握手しなかった。納得しないから。岡田はそういう人間なのだが、ポイントはその次の日。阪神球団は今回の一件に関して、NPB側に意見書を提出。すると即座にNPBサイドが反応。偉いさんが20日、直接、球場を訪れ、直接回答。この一連の流れに岡田は納得。審判とも和解の握手となった。

ここで効果的だったのが球団提出の意見書だった。中身に関して、こと細かな実情が書かれていた。これによってNPB側もルール的に今後の検討材料に…とする回答を引き出したわけで、そのあたりのことに岡田は納得したのだ。

もし、球団が即動かなければ、岡田はさらにヒートアップしたに違いない。こういうケース、過去に何度あったことか。その度に岡田と球団の亀裂が生じ、いつの間にか、現場と球団との協調路線は消えていく。常に岡田と球団はモメている。そんなイメージばかりが張り付いてしまった。

そもそも今回の監督復帰に対し、球団の大部分が反対の方向で進んでいた。球団サイドの監督候補は平田勝男。ところがもっと上の力のある勢力から岡田を推す声が高まり、球団案はアッサリとポシャった。

そんな経緯があるものだから、当初から球団と岡田の関係を危惧する声はやまなかった。「うまくいくはずがない」「岡田がフロントに不満を爆発させる」などなど、それは騒がしいことだった。

2008年の退団時。球団の対応次第では監督辞任は回避できていた。それは事実で、岡田もそれを認めていた。以来、シコリは残っていたのだが、今回は表立ってのギクシャク感は出ていない。というより、現場と球団の関係は意外と良好のようだ。今回の意見書にあるようなスピード感のある対応。その結果も望むようなことになりそうで、岡田も矛を収めた。

その前には戦力的な面での岡田と球団の話し合いがあった。新外国人のB・ケラーの処遇に関し、契約打ち切りを決定。それで結論が出ていたところ、球団が即座に新しい外国人投手をリストアップ。これを獲得することに決めたのだ。

岡田はこう語っている。「別に新しい外国人を、オレは頼んでなかった。それが球団が気を使って、獲得したんやろな。まったくB・ケラーは戦力にならんかったから、球団も気を使ったんかな」。この戦力補強を岡田は受け入れたし、球団の即決ぶりに文句はなし。

そもそもいずれモメるとされながら、チームの成績がここまできて、球団が監督に対し、不満や反対の空気が出るわけがない。電鉄本社、球団の情報に詳しい有力OBはこう語る。「本社上層部の岡田に関する信頼度は相当高い。球団がいろいろと言えるわけがない。フロントもそれがわかっている」。

まあ、結構なことだ。現場が「アレ」にまい進し、球団は裏でバックアップ態勢を万全のものにする。何より65歳になった岡田。丸くなったということなんだろう。【内匠宏幸】

(敬称略)

8月19日、DeNA対阪神 試合前のメンバー最終確認で、審判団と握手せずに早々に引き揚げる阪神岡田監督(右)
8月19日、DeNA対阪神 試合前のメンバー最終確認で、審判団と握手せずに早々に引き揚げる阪神岡田監督(右)
8月20日、DeNA対阪神 試合前のメンバー最終確認で、審判団と笑顔で握手する阪神岡田監督(右)
8月20日、DeNA対阪神 試合前のメンバー最終確認で、審判団と笑顔で握手する阪神岡田監督(右)