いい光景が続いた。9月14日の甲子園。監督の岡田彰布が6度、宙に舞った。そのあとだった。いったんベンチに戻る監督、コーチ、選手、裏方を、多くの本社、球団関係者が出迎えた。2003年、2005年にはなかったことだ。
さらに優勝のあいさつ。「アレ」を「優勝」とやっと言い換えて、岡田はスタンドのファンから大きな拍手を浴びた。さらに場所をホテルに移してのビールかけ。「ミエちゃん、主役ちゃうよ」と笑いを取り、やんわりとした口調でこう続けた。「(ビールかけを)もう1回やるよ。今日は予行演習やから」。選手からどっと声が上がった。
18年ぶりのリーグ優勝。感激、感動の連続だったが、ここが終わりではない。岡田が言うように先がある。まずはファイナルステージを勝ち抜け、日本シリーズに。1985年以来、38年ぶりの頂点が待っている。
だが、待てよ。過去のデータはポストシーズンに弱い岡田を示している。2005年の日本シリーズ。パ・リーグの覇者、ロッテに好き放題されて4連敗。2008年はクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで中日と対戦。最後は例の場面。藤川球児がタイロン・ウッズに本塁打を浴びて敗退。退陣が決まっていた岡田は試合後、別れのセレモニーに現れ、藤川に「お前で終われてよかった」と大泣きした。
「そんなこともあったよな」。岡田はフフッと笑った。振り返れば2005年はロッテの若さにやられた。西岡、今江。「むちゃくちゃ、やられたもんな」と言うように、打ちまくられて、挙げ句、霧のためのコールド負け。スタートが相手本拠地だったのが、大きく響いた。
2008年の最後の場面は「あそこでフォークを投げていたら空振りやったけど」。バッテリーが選んだ配球にベンチから変えるような指示を出さなかった。
悔いは残った。まずはそれを取り払うポストシーズンになる。リーグ優勝したことで、ファイナルステージは甲子園で戦うわけだが、ここでモノをいうのが「地の利」。やはりタイガースは本拠地で強い。今シーズン、ホーム(京セラドーム大阪を含む)で貯金を「20」以上たたき出している。戦い慣れた球場で、とにかく阪神には分のいい条件がそろっている。土のグラウンド、ホームランが出にくい広さ。風向き、秋には変化する浜風。なんといってもスタンドの後押し。ファンがかけ続ける圧力は、相手にとって脅威になる。
どこが相手になる? 広島、DeNA、巨人のどこになる? 個人的に不気味に映るのがDeNA。岡田もここの強さは認めている。
いずれにしても短期決戦。ここをクリアすれば日本シリーズだが、ここも岡田には因縁のあるチームばかりになる。ソフトバンクが出てくれば2003年、コーチ時代にシリーズで戦った相手。当時はダイエーだったが、時の監督、星野仙一は3勝4敗で敗れ、そのまま監督の座を退いた。
ロッテはもちろん2005年のリベンジ。まともな戦いができなかった4試合。まさかのスイープにあった相手となれば、盛り上がることは間違いない。
そしてオリックス。これが実現すれば、実に珍しい対戦になる。関西ダービーはもちろんだが、岡田は両チームで監督を務めた。かつて監督だったチームと日本シリーズとなれば、記憶では古くは三原脩(巨人、西鉄)、王貞治(ダイエー、巨人)しか思い浮かばない。
とにかく、どれもこれもストーリーを感じるポストシーズンになる。およそ1カ月後、PSに弱い岡田…を払拭できるか。楽しみでしかない。【内匠宏幸】(敬称略)




