クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージまで、あと10日を切った。現在、阪神は甲子園で調整を続け、こののちに宮崎のフェニックスリーグで実戦調整に入る。そんな中、10月8日、甲子園をのぞいてみた。
番記者に囲まれた監督、岡田彰布は一塁側アルプススタンドに腰を掛け、取材を受けていた。一段落ついたところで、声をかけた。「ちょっと話しようか」と、別の場所で久しぶりに向かい合った。
「ここからどう高めていくか。ジタバタしても仕方ないしな。まあ、みんな、自分がやることをわかっているから、心配とか不安はないで」。何となく「王者」の風格が伝わってきた。長いシーズン、勝ち切った誇りというのか、まともに戦えば、広島であってもDeNAであっても、やっつけることができる。それほどの自信が感じられた。
岡田は改めて口にした。「最初は『?』という作戦とか用兵やと感じていたかもしれん。でもな、それが成功するにしたがって、選手が意図を理解し、ベンチの考えを共有できていった。これが大きかった。もし最初の方に失敗が続けば、ガタガタになっていたかもしれん」。ベンチの意図、監督の狙い、そして考え方…。選手が疑問から納得に変化していくにしたがって、チーム力は格段についていった。
2軍の監督時代のことを思い出す時があるという。阪神を追われ、当時のオリックス監督だった仰木彬に救われ、その後、阪神に復帰。2軍から指導者の道を歩み出した。「オレが2軍の監督になった頃、ホンマ、若い選手にミーティングで野球を教えてた。みんな、その時はわかったような顔をするけど、質問するヤツはいなかった。そんな中、ひとり、手を挙げて、くらいついてきたのがアイツやった」。それが若い頃の関本賢太郎だった。「関本が一番メモを取り、わからぬことを素直に聞いてきた」。岡田はシメた、と思った。「そういう選手がいると、周りに影響を与える。若いヤツが野球を理解していくようになったもんな」。
その頃と、次元は違うが、同じような状況ができあがっていった。最近の若い者は…というフレーズを聞くが、岡田は決してこんな感覚を持たなかった。「若いから…といって、捨てたもんやない。彼らの理解力はホンマ、すごいで。もちろん、戦略が成功して成り立つのやが、なぜ成功したのか、どういう狙いがあったのか。それをみんながわかった。そこからチームは大きく変わったよな」。リーグ優勝の裏で、65歳監督と若い選手との相互理解があった、と岡田は明かした。
さあ、これから挑むのは日本一への道。前回の監督時、あくまで重きをおいたのはレギュラーシーズンで頂点に立つこと。CS制度にはかなり否定的であった。CSはあくまで「おまけ」的な感覚だった。だから今年も、それほどの意気込みはないのか…と予想していたら、まるで違っていた。とにかく日本一まで勝ち切る。今回のCSはおまけではない。必ずそこにたどり着くという気持ちが、岡田の表情から読み取れた。
ホンマ、強くなったで。チームの成長をテレもなく言い切る。自分が何をすべきかを理解した選手に、岡田の自信がブレることはない。レギュラーシーズンの強さをそのままに。相手はどちらでもいい。「うちの野球をやればいいだけ。そういうことよ」と言ったあと、「おーん」が聞こえた。【内匠宏幸】(敬称略)




