2月1日、キャンプイン。その前日、沖縄入りした阪神監督の岡田彰布は選手を前に熱弁をふるった。チームミーティングでのこと。「今年も勝ちたい。オレはホンマに勝ちたいと思っている」。それは「優勝できる力があるから」と根拠のある願望を口にしたのだ。

今年の沖縄1軍キャンプ。投手、捕手、内野手、外野手合わせ40人。平均年齢はなんと25歳である。若い、本当に若い選手層。だから岡田も意識する。

「そらオレが調子悪いとか、体調がすぐれないとか、言ってられんやろ」。若いころから自分の体に自信を持っていた。「風邪なんて引いたことないからな」と豪語。これは言い過ぎの感はあるけど、体力は並外れていた。

しかし現在66歳。衰えを感じ始めている。だからキャンプ直前、病院に向かった。体の隅々まで検査した。結果が出た。医師からは「岡田さん、まったくもって異常なし」と告げられた。

実は気になることがあった。それは昨年のシーズン中。監督インタビューが流れると、妙にせき込むシーンが多く見られた。「あのせき、大丈夫か?」と聞くと「タバコの吸いすぎやろな」と返していた。そのことも含め、検診でのOKサインに岡田はホッと胸をなでおろした。

他にも岡田なりに気を使っているところも見えた。つい最近、食事をした際のことだ。ほとんどが肉中心のメニューで、岡田はその好きな肉しか食べない。「野菜も食べた方が…」と言うと「そんなん、嫌なものは食べんよ。ほっといて。これで病気したこともないんやから」と突っぱねた。

それが今回の食事。しゃぶしゃぶだったのだが、岡田は鍋に野菜を入れ、白菜、エノキといったものも食べていたのだ。これには少し驚いたけど、岡田なりに体のことを考えているということなんだろう。

「ケガするな、どこか痛めたらアカンと選手に言うのに、こっちが体の調子が悪いなんて言えないやろ」。それは酒量にも表れる。若いころから飲めばトコトンのタイプ。日付が変わり、朝が近づいても平気だったが、いまは控える。「控える? 違うで。ホンマ、飲めば眠くなるんよ。もう昔みたいに飲めんし、飲む気にもならん」。だから飲みに出る機会はめっきり減った。大阪のミナミ、キタには昨年1、2度出ただけ。66歳の年齢を意識して、体力を維持している。

そんなこんなでスタートした沖縄キャンプ。昨年(一昨年の秋季キャンプも)は自らグラブをつけて守備を教えたこともあったが、今回は「見る」ことに終始する。それは着実に成長している選手の姿があり、自分が動いて教える必要性がないから。「あとはコーチよ。コーチに任せておけばいい」。そういえばキャンプが始まると、岡田はいつもこう表現してきた。「キャンプの主役? それはコーチや。コーチが主役になって、進めていけばええわけよ」と、今回もそのスタンスを崩さない。

平均年齢25歳に監督が66歳。ジェネレーションギャップがなかったことを昨年に証明した。今年はさらに万全の体調で岡田は1カ月、挑む。「体? なんの心配もないわ」。今年も岡田は元気だ。【内匠宏幸】(敬称略)