<イースタンリーグ:日本ハム3-5巨人>◇26日◇鎌ケ谷


真夏の暑さの中、田村藤夫氏(62)は2軍戦に足を運び、ファームの先発メンバーから、日本ハム新庄剛志監督(50)が思い描く来季構想の一端を感じ取った。

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日本ハムの1番から5番までを見て、これはすごいなと思った。

1番DH中島

2番左翼今川

3番一塁王柏融

4番中堅近藤

5番二塁渡辺

近藤は5月に左脇腹を、渡辺も4月に右足を痛めている。両選手ともに回復に時間がかかることから、治るまで2軍戦で試合を積むのだろう。

ミスも出たし、しっかり考えた走塁も実践している。死球で出塁してけん制でアウトになった中島の動きは物足りなかった。初回ウィーラーの二塁正面の併殺打性の打球を処理し、セカンドへ暴投した渡辺のスローイングは不用意。

その後、菊田のセンターへのライナー性の打球に、近藤が一歩目で前に出てから慌てて下がって頭を越された。打球判断を誤っている。難しい打球だったが、こうした部分も精度を高めてほしい。

逆に、5回の攻撃では2死から王柏融が右前打で出塁。続く近藤も右前に打ってつなぐ。王柏融が三塁を狙うと、巨人の右翼が中継を経ずに直接三塁で刺そうと投げる。この送球が高くそれるのを見逃さず、近藤は二塁に達し、2死二、三塁とチャンスを広げた。

こういうところに、いつでも1軍でやれる、という意欲を感じる。まだ6月だが、すでに70試合を消化した。シーズンも半分を過ぎようとしている。近藤、渡辺は首脳陣から声がかかればすぐにでも1軍に昇格できるだろう。

一方で、ここまでの1軍のメンバーを見ていると、私の印象としては松本剛、野村、万波、清宮は来季を視野に入れ、今後も新庄監督が起用を続けるのではないかと感じる。現在首位打者としてチャンスをつかんでいる松本剛は当然として、野村以下若手はある程度の失敗はあっても、根気強く使っていこうという方針は感じられる。

となると、故障とは言え近藤や渡辺のように実績はあっても出遅れた野手は、チャンスをつかむところからのスタートとなる。開幕前、新庄監督はすべての選手を横一戦で扱うと公言した。それでも、私は近藤は抜けており、スタメンに近いだろうと感じていた。アクシデントから回復し、ここまで動けるようになっても、慌てて1軍に上げない。こういうところに、チームがどんどん変貌していく様が伝わってくる。

1軍の借金は17(26日終了時点)。苦しい戦いを強いられているが、新庄監督はどんどん若手を使い、試しながら今後への構想を具現化しようと感じる。言い方を変えれば、目先の1勝よりも、来季を見据えた長期ビジョンでチーム作りを進めているように見える。

2軍はアピール、1軍は結果。これが原則であり、その中で誰がチャンスをつかむかの競争が続く。これで近藤、渡辺が仮に昇格すれば、内野も外野もさらに競争は激しくなる。このまま打率を維持すれば松本剛が外されることはないだろうが、それ以外の野手には誰にもチャンスはあり、そして誰もが常に危機感を持たされる。

開幕前、今の1軍のスタメンは想像できなかった。そして故障はあったが、6月下旬にこれだけのメンバーが2軍で1番から5番を打っているのも考えられなかった。

ここからのおよそ70試合は、最下位チームだからという悲壮感とはまたひと味違う緊迫感に包まれながら進んでいく。2軍のメンバーを見て、新庄監督によるシャッフルのえげつなさを感じる。

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19年シーズンを最後に中日を退団し、はじめてプロ野球界を外から見ることになった。18歳で日本ハムに入団し、42年をこの世界で生きてきた者として、こうしてファームに特化したリポートが足掛け3年で100回目に、驚きがある。

夢中で球場に足を運んできた。腰痛をカバーするために座椅子を持参。暑さ対策として日傘を差す。そして新型コロナでファームも制約が増えた。混乱はあったが、気が付いたら100回目だった。

今まではコーチ目線で選手を観察し、気が付く点は直接選手にヒアリングして、心情や狙いを確認できたが、今は違う。外から見た印象を元に、私の経験を加味して「こういうことではないか」という切り口を読者の方に、ひとつの考え方として提供している。

まだ3年目。これから暑い夏との戦いにもなるが、将来有望な若手の可能性、現状打破できずに苦しむ中堅選手へのヒント、そして年齢にあらがうベテランの意地。

そういう部分をなるべく細かく、そしてできるだけ公平な視点から、これからも読んでくださる野球ファンの皆さんにお届けしたい。野球を観戦する際、何かのお役に立てれば幸甚です。(日刊スポーツ評論家)