15日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のイスラエル戦、侍ジャパン小林誠司捕手(27)は気後れすることなく、千賀に通称「お化けフォーク」を要求した。昨年11月、オランダとの強化試合でマスクをかぶったが、2イニング連続で後逸。不安視されたが、堂々たる姿で好リードした。

 5回無失点の好投を導いたのは、フォークを要求した小林の「勇気」だけではなかった。「絶対に止めてやる」との気持ちと普段の準備、努力のたまものだった。一皮むけた小林の姿を見て、現実を直視しながら、真剣な表情で語った言葉を思い出した。


 小林 考えても仕方ないです。下手くそな人間は、できるまで練習するしかないんです。


 広陵高入学時は、速球派の投手だった。3年時はエース野村(広島)を支える不動の正捕手を務めたが、苦境が訪れる度、小林は努力で今のポジションを築き上げた。

 小林の姿を見て、1人の高校生の姿が浮かんだ。19日から開幕する第89回選抜高校野球大会(12日間、甲子園)に出場する東海大市原望洋(千葉)の宍倉貫太捕手(3年)。ドラフト候補にも挙がるエース・金久保優斗投手(3年)の女房役である。宍倉もまた、昨年秋に外野手から捕手に転向した。

 最速147キロの直球、フォーク、スライダー、カーブを操る高校屈指の好投手の女房役は、簡単ではなかった。高校1年時に捕手の練習はしたが、すぐに主戦場は外野に移った。「とにかく、ボールをたくさん受けようと思った」。打撃マシンのボールで捕球練習を繰り返した。ワンバウンドを止める練習では「両太ももにあざができた」。


 宍倉 体のどこに当たってもいいから、止めようと。どんな形でも、止められたら、気持ちいいです。


 偶然にも、捕手としての目標は小林を挙げる。自身も小林と同じく、強肩が持ち味でもある。「少しでも、(投手を)助けられれば」と肩をグルグル回した。打線では1番を任される「打てる捕手」は「攻撃でも、守備でも、チームを引っ張っていけるように」と意気込む。【久保賢吾】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)