「高校で野球は辞めます。本当は、大学、プロ野球を目指したかった」。今夏の甲子園でベスト8に進出した三本松(香川)の一塁手・盛田海心(3年)は決意を胸に挑んでいた。

 高校1年の冬、体育の授業中にサッカーボールを蹴ろうとした時、右膝が「ガクッ」と来た。病院に行くと「よくこんな膝でやってましたね」と言われた。膝蓋(しつがい)骨の脱臼。元々膝は良くなかったが、オーバーワークがたたった。半月板損傷手術を受け、リハビリを続け復帰したのは今年の4月。三塁だった守備位置は一塁になった。スクワットは今も深くは沈めない。正座も出来ず、右膝を折っていたスライディングは、左膝に変えた。

 野球を辞めようと思ったこともある。選手兼マネジャーとしてノックを打ったり、チームを支える道もあるのでは、と。でも、小林明弘部長(44)と日下広太監督(33)は復帰を待ってくれていた。「3年生の夏にゆっくり帰ってくればいいから」。両親も後押ししてくれた。感謝の気持ちとともに、聖地に来た。

 20日に行われた東海大菅生(西東京)との準々決勝。1-9で敗れたが、盛田は4打数2安打と爪痕を残した。「周りに支えられてここまでやってきた。地域の人に役に立てる仕事をしたい。(甲子園は)自分の力を最大限出させてくれる場所でした」。自分の野球人生を支えてくれた人へ、応援してくれた人へ、今度は恩返しする番だ。【磯綾乃】