第90回記念のセンバツは、史上最多の安打が飛び交った。大会通算安打数は合計616本。17年の第89回の608本を上回って、センバツ史上最多の安打数となった。1日に行われた準々決勝は智弁和歌山-創成館(長崎)の11-10、三重-星稜(石川)の14-9など、4試合で計67得点。参加8校の第1回大会を除いて、02年の準々決勝4試合計61点を上回り、こちらも大会史上最多となった。

 金属バットの性能が上がり、ウエートトレーニングが日常的に行われるようになったことなど、打撃向上の要因は多数あると思うが、技術の進化もその陰にある。

 センバツに出場した東邦(愛知)は打撃練習に、人工知能(AI)搭載のピッチングマシンを取り入れる。石川県の「西野製作所」が金沢大と共同で2年をかけて開発したものだ。球速は80キロから160キロまで。安全のため上限をつけているが、制限を外せば200キロまで球速が出る。そこにカーブ、スライダーなど変化球を組み合わせて約200種類もの球が繰り出せるという。

 一番の特長は人工知能(AI)が配球を学習すること。対戦校のデータを入力すれば、その傾向通りにボールが繰り出される。試合さながら、次にどの球種が出てくるか分からないため、配球を読む練習にもなると言う。「西野制作所」の西野十治社長(65)は「(エンゼルス)大谷君のど真ん中の160キロのストレートの後に、(ヤンキース)田中将大君のストライクゾーンに落ちるスライダーというように投げることができます」と話す。さらに、他の選手よりもっと横に曲がるスライダーなど、選手の球種の特長も学習させることができる。

 東邦は16年夏の甲子園2回戦・八戸学院光星戦で、9回に4点差を逆転した。この日、八戸学院光星はエースではない投手を先発させた。東邦は打ちあぐねたが、7回にエースが登板すると徐々に安打が出始め、5-9の9回の土壇場で6安打5得点。東邦はこのピッチングマシンで「八戸学院光星のエースの投球」をずっと練習していた。

 現チームの東邦の主将・稲留克哉は「いろんな球種、コースが全部ランダムで出てくるので、変化球の対応や配球を読むことができる」と話した。今はまだ重厚な機械の形をしているが、いずれは投手の「間」も再現出来るような人型ロボットのピッチングマシンも? 技術の進化に夢が広がる。【磯綾乃】

西野製作所が作った人工知能を搭載したピッチングマシン「Pitch18」のタッチパネル
西野製作所が作った人工知能を搭載したピッチングマシン「Pitch18」のタッチパネル