抜けるような青空から見届けてくれた、亡き友にささげる3連覇だ。天理大・藤原忠理監督(52)は宙を舞いながら、天に見せるように背番号5のユニホームを胸に広げた。

優勝を果たしナインから胴上げされる天理大・藤原監督(撮影・和賀正仁)
優勝を果たしナインから胴上げされる天理大・藤原監督(撮影・和賀正仁)

 20日に南港中央野球場で、天理大は関西外大を下し、阪神大学野球春季リーグ戦で3季連続18度目の優勝を決めた。勝ち点5の完全優勝だった。藤原監督は「選手たちが本当によく頑張ってくれた」とナインをたたえ、感極まった。

 「チームをひとつにしてくれたのは福丸。僕の胴上げじゃない。今日は福丸を胴上げできた」-。

 「耳が聞こえない」。昨年8月、2年生の内野手だった福丸和起さんは突然訴えた。病院へ行くと白血病が発覚し、そのまま入院生活が始まった。指揮官が「最初にグラウンドに来て、最後に帰る選手」と評するほどの努力家。「グラウンドに戻りたい」と懸命の闘病を続けた。選手たちも代わる代わる見舞いに訪れ、復帰を願った。

 だが、今年1月、悲しい知らせが届いた。葬儀の日にチームで誓った。「福丸を絶対に全国へ連れて行こう!」。練習中も、リーグ戦も、福丸さんのユニホームをベンチに掲げ、ともに戦った。

福丸和起さんのユニホーム(中央)を掲げ試合を行う天理大(撮影・和賀正仁)
福丸和起さんのユニホーム(中央)を掲げ試合を行う天理大(撮影・和賀正仁)

 ナインはグラウンドで奮い立ち、怒濤(どとう)の新記録ラッシュを見せた。第5節の大体大3回戦で、リーグ新のチーム1試合23安打で16得点。個人でも1番の権代(ごんだい)雄太郎外野手(4年=安来)が最多安打(27本)と最高打率(5割5分1厘)、4番の田中秀政内野手(4年=明徳義塾)が最多打点(18点)と、3つのリーグ新記録を樹立した。

優勝し福丸和起さんのユニホームを手にする天理大・藤原監督(撮影・和賀正仁)
優勝し福丸和起さんのユニホームを手にする天理大・藤原監督(撮影・和賀正仁)

 荻野翔大郎主将(4年=社)は「みんなが福丸の思いを背負っている。やってやったぞと報告して、喜びを味わいたい」と力を込めた。福丸さんと一緒に、6月11日開幕の全日本大学野球選手権(神宮、東京ドーム)に臨む。【吉見元太】