高槻北(北大阪)のエース小林千真投手(3年)は最後の夏、代打での出場だった。第100回全国高校野球選手権記念南北大阪大会が7日に開幕。北大阪大会の開幕試合は、大産大付-高槻北だった。高槻北は初回無死満塁のピンチを、三重殺で切り抜けるなど見せ場を作ったが、3-10で敗れた。

 7回先頭で、小林は代打で打席に立った。「バットにも当たらないんじゃないかと思っていたので、うれしかった」。3球目の変化球を捉えて中前に運んだ。それはさまざまな思いがつまった一打だった。

 小林の高校野球最後の1年は、苦しい出来事が続いた。部内の不祥事により1月から、今大会直前の7月上旬まで対外試合禁止。実戦経験を積むことができなかった。6月の体育祭。リレーのアンカーで走っていると、突然右足に激痛を覚え、動けなくなった。右腸腰骨付近を骨折し、今大会の1週間前まで松葉づえでの生活を余儀なくされた。「夏にかける思いが強かった。絶対に戻してやろうと思っていた」。この1週間はダッシュは一切せず、必死に投げ込みを続けた。この夏にかけていた。

 6月18日に起きた大阪北部地震の影響もあった。学校の貯水槽の配管が破裂し、校舎の3、4階が水浸しに。3日間休校となり、その後も平日は1日1時間程度しか練習が出来なかった。「正直苦しかったです」。いろんな出来事を経験した上での打席だった。

 高槻の地元の人は、練習中に「頑張って」と声をかけてくれたという。「勝つことが恩返しだと思っていた。あれだけ苦しい時期が多かったし、残念です」。悔いは残る。だが、周囲の支えに応えようと、必死に勝利を追い求めた思いも、残り続ける。【磯綾乃】

高槻北対大産大 大産大・田中優樹主将(左)と健闘を称え合う高槻北・小林千真主将(撮影・上田博志)
高槻北対大産大 大産大・田中優樹主将(左)と健闘を称え合う高槻北・小林千真主将(撮影・上田博志)