早大の新監督に就任する小宮山氏(左)と新主将の加藤(撮影・古川真弥)
早大の新監督に就任する小宮山氏(左)と新主将の加藤(撮影・古川真弥)

30年前の友の存在が、よきお手本となっている。

来年1月1日に母校・早大の監督に就任する小宮山悟氏(53)が24日、学生たちに強烈なメッセージを送った。西東京の同大グラウンド。練習納めの大掃除を終えると、100人を超える部員を集め、訓示した。

「日本一になるのは甘いものじゃない。今のままではダメだ。意識を変えて練習しないと、日本一にはなれない。日本一という目標ありきではなく、自分たちの練習をやること」

真意を説いた。「学生たちは『日本一を目指します』という。でも、日本一なんて、軽々しく口にするせりふじゃないんです。たしなめないと。(日本一を目指す)覚悟があるなら、それを示せという話です」。自らの経験が根底にある。学生時代「鬼の連蔵」こと石井連蔵監督の薫陶を受けた。「日本一なんて言えない、言えない。今日は何をするのだろう? 1日、無事に終わってくれ、という雰囲気でしたから」と笑って振り返る。

レフト後方に見えた馬術部の馬のように走らされた。投手でも過酷な打撃練習。冬場でも素手で打たされた。厳しく鍛えられ、プロ入りの土台を築いた。「自分が学生の時となぞらえ、比較してしまう。正しいかは分からないけど、心のよりどころです。厳しい指導だったけど、その中でいろんな言葉がプラスになった学生時代でした。今の学生に通用するかは分かりませんが、経験は彼らに伝えないといけない」。

小宮山氏は「練習量なら誰にも負けない」と思っていた。が、同期に自分よりもっと練習する人がいた。大沢明さん。同じ投手だった。

その大沢さん、1年の時は、打撃投手に立っても打撃ケージの中にすら投球が入らなかったという。たゆまぬ努力の結果、4年春にはリーグトップの防御率1・38を残し、同年秋には黄金時代にあった法大相手に1安打完封勝利までやってのけた。小宮山氏は「大沢を見いだした石井さんもすごいけど、やったヤツが勝つんだなと。自分より、大沢の方がやったかな」と懐かしんだ。

監督就任が決まり、大沢さんは大喜びしてくれたという。小宮山氏は「1年の時はメンタルやられて、ケージにも入らなかった大沢が、死にものぐるいでやって、あれだけの成績を残した」と感慨深げに言った。時代が違う。むちゃくちゃな練習や理不尽を課すつもりは毛頭ないが、3年間、6季連続優勝から遠ざかる母校の再建を託された使命がある。「潜在能力は高い学生が多い。本気を見せて欲しい」と期待する。大沢さんのように。【古川真弥】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)