適役にたどり着いた。帝京(東京)・野宮ハヤット夢咲(ののみや・はやっと・むさ)捕手(2年)は「投手をやっていた分、投手の感情を利用できます。投げやすいよう、投手主体のリードをしたい」と話した。身長185センチの大型右腕として入部したが、今年6月に右肩を負傷。前田三夫監督(71)から「バッティングに専念しろ」と言われ、外野、一塁と回ったが、守備の不安がつきまとった。はっきりものを言えるリーダーシップを買われ、今秋大会後、捕手になった。
「ハヤット」は、パキスタン出身の父キザールさん(53)のミドルネームを引き継ぐ。元クリケット選手の父譲りの打力が売り。1学年上に好投手がそろっていたこともあり、公式戦は未出場だが、前田監督からは「春には4番もある」と期待される。実戦形式の練習では、逆方向の右翼にも放り込む。今秋は、2回戦で小山台に0-10の6回コールド負け。野宮のコンバートで、打線の軸をつくる狙いがある。
今の目標はもちろん甲子園だが、将来の夢はパキスタンの子どもたちに野球を教えること。小3の時、半年だけイスラマバードの父の実家で暮らした。路上で暮らす子どもたちの姿が記憶に残る。「今思うと、日本とは違う景色。同じ年代の子たちが生きるのに必死だった」。そんな彼らに夢を与えたい。自らの名前のように、夢を咲かせたい。
小4まではサッカー少年だった。「蹴らずに投げてました。そっちの方がコントロールついたので」と笑って明かす。帝京に入学後は71キロまで体重が落ちたが、苦手な食事も頑張り、85キロのボディーを手にした。サッカーからの遠回り。投手からの遠回り。必要な時間だったのだろう。その先の夢へと突き進む。【古川真弥】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)




