2部鶴見大との入れ替え戦を戦う1部の横浜国大には、文武両道の藤沢涼介一塁手(2年)がいる。

負ければ降格が決まる第2戦に「2番一塁」でスタメン出場。3打数2安打で勝利に貢献し、残留に望みをつなげた。

秋季リーグの打率は「ぴったり4割」(藤沢)。順調な大学野球生活を送っているが、高校時代に野球を続けるかどうかの岐路に立たされた。甲子園に春夏通算10度の出場を誇る栃木・佐野日大出身。高1秋からベンチ入りは果たしたが、練習の量も質も、想像をはるかに超えていた。送球難にも陥り、捕手から一塁手に転向。自信を失い、大好きな野球を続けられるか、迷っていた。

転機は高2冬に訪れた。新型コロナウイルスが流行しはじめ、練習もストップ。寮も閉鎖され、進路について真剣に考える時間が増えた。野球部は、ほぼ全員がスポーツ推薦で大学進学する。しかし、当時野球部で唯一、難関国公立大や難関私立大を目指す特進コースだった藤沢は、友人の教えで横浜国立大野球部のホームページを見た。そこで目にした文章に、くぎ付けになった。

「先輩方が長い時間をかけて作り上げた『主体性』や『考え抜く』伝統を必死で受け継ぎ」

「主体性」という言葉が、刺さった。意識すると野球にも前向きに取り組めるようになり、高3夏までレギュラーを張れた。自信も少しずつ取り戻せた。もっと自分が成長するためにも、自ら考える野球がしてみたいと、ほぼ全員が入学試験を合格して入ってくる横浜国大を第1志望に決めた。1日10時間、寝る前などの隙間時間も使って勉強し、希望通りに合格した。大学でも「主体性」をもって野球に打ち込み、2年ながら主力を任されている。

7日には鶴見大との入れ替え戦の第3戦が控えている。ここまで1勝1敗。野球部を16年間引っ張ってきた田中英登監督(65)は今季限りでの退任を発表しており、勝っても負けても最後の采配となる。「絶対に勝って監督を男にしたい」。1部残留で指揮官の花道を飾ると、藤沢は力強く前を向いた。【星夏穂】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)