広島対阪神 日米通算100勝を達成したメッセンジャーとハイタッチする梅野(撮影・加藤哉)
広島対阪神 日米通算100勝を達成したメッセンジャーとハイタッチする梅野(撮影・加藤哉)

中谷将大はよく打った。メッセンジャーも粘投した。大山悠輔も4番の苦しみの中で結果を出した。だけど言いたい。阪神連敗脱出のヒーローは梅野隆太郎だ。左足薬指の骨折を押してスタメンマスク。まさに闘魂注入だ。

「痛くなるのは終わってからかもしれませんけど。いまは大丈夫。気持ちでいかないとね。内容よりも結果でしょう。勝たないと。勝てばいろいろ変わっていきますから」

。勝利後、いつものように、しっかり足を止め、梅野は言葉をつないだ。

試合前、冗談半分に梅野に言った。足を踏まれないようにせんとあかんな、と。梅野は真顔で答えた。「そうなんですよ。危ないからね」。2日巨人戦(東京ドーム)で走塁の際に左足の指を負傷。3日に東京遠征中のチームを1人離れ、4日になって骨折が発表された。しかしチームドクターの「治療を続けながらであれば試合出場は可能」という判断もあり、この日から戦線復帰した。

「やるしかない。(患部は)固めています。あとはアドレナリン」。そう言い切って臨んだ試合では、しかし、いつも以上のプレーを見せた。気合を爆発させたのは同点だった4回1死満塁で回った打席だ。二ゴロは併殺コースに飛ぶ。痛む足を気にせず、一塁へ全力疾走。そのまま頭から滑り込んだ。結果はアウトだったが気合を感じさせた。

得意の「梅野バズーカ」も見せた。8回2死から出た代走の俊足・曽根海成がスタート。刺すべく二塁へ好送球だ。余裕でアウトのタイミングだったが鳥谷敬のグラブから球がこぼれ、セーフ。それでも持ち味は見せた。9回には中前打も放ち、最後まで勝利に貢献したのだ。

奮闘した梅野だったが口から出てきたのは投手への賛辞だった。「ランディも我慢して投げてましたから。それが中谷の本塁打にもつながったし、1点差勝ちにもつながったと思います」。

もちろん梅野も我慢した。先発メッセンジャーから桑原謙太朗、能見篤史、ジョンソン、そしてドリスの投げた158球をしっかりミットに収め、試合をものにした。

巨人に連敗中、闘志を見せる選手はいないのか、と書いた。そこに近い選手として頭にあったのは梅野だった。巨人小林誠司に対し、「絶対に負けたくない」と公言し、捕手としてのライバル心を隠さない。そんな選手は少なくとも阪神にはめずらしい。この日も3得点。今季のマックスを超えることはできなかった。それでもこの勝利は後につながるはず。そう思いたい。(敬称略)

広島対阪神 4回表阪神1死満塁、梅野は二ゴロで懸命に一塁にヘッドスライディングするも併殺に倒れる、一塁手バティスタ(撮影・上山淳一)
広島対阪神 4回表阪神1死満塁、梅野は二ゴロで懸命に一塁にヘッドスライディングするも併殺に倒れる、一塁手バティスタ(撮影・上山淳一)