この日のヒーローはサヨナラ安打を放った大山悠輔だった。子どもたちによるキッズ・インタビューで笑顔を浮かべた大山。その話の中で目標にしている選手の1人として鳥谷敬の名前を挙げた。

鳥谷は阪神の生え抜き選手だ。つまり入団してから、ずっと阪神で選手を続けているということだ。生え抜きとしては過去最多となる2071安打をマークしている。

打者としての鳥谷の特徴は「ボール球を打たない」という点だ。野球を始めた子どもたちは「ボールをよく見る」ということを最初に教えられるだろう。ボールをしっかり見ていないとキャッチボールもできない。ボールにバットを当てることなど、もっと無理な話だ。

その中で「ボール球を打つな」ということも教えられるはずだ。鳥谷はこれを守っている。だから選んだ四球も1037個と多い。実は有名選手にはボール球を打つ人もいる。オリックスから海を渡り、大リーグでも大選手になって今年、現役を引退したイチローはその代表格だ。ワンバウンドした球を打ってヒットにしたこともあるぐらいだ。

しかし鳥谷は違う。2000安打を放ったときにこんな話をしていた。

「ボクはボール球を打たないのではなく、打てないんです。ボール球を打ってヒットにできるのはそういう技術のある人。ボクは違う」

ボール球を打ってヒットにできるのは天才という意味のようだが、しっかり練習してうまくなっていくには鳥谷のやり方が近道だと思う。

四球はこわい。プロ野球の監督で四球をいやがる人はとても多い。この試合、延長10回、DeNA三嶋一輝は2死から四球を出した。これがなければ大山にサヨナラ安打を食らうこともなかったかも。

投手からすれば安打を許す以上に注意しなければならないのが四球。打者にすれば見極めて選べば有利になるのが四球だ。少年野球からプロまでそれは同じだ。(敬称略)