ファンの声援に帽子を取って応える糸原(撮影・前田充)
ファンの声援に帽子を取って応える糸原(撮影・前田充)

ドリス・デイが97歳で亡くなったのは感慨深いニュースだった。1956年の代表曲「ケ・セラ・セラ」は幅広い年代に知られている。日本でも雪村いづみ、ペギー葉山らが日本語版をヒットさせた。同年のヒチコック映画「知りすぎていた男」の主題歌。生まれる前の作品なのだがテレビで見た。面白い映画だし、曲はあまりにも有名だ。

なにより「ケ・セラ・セラ」=「なるようになる」というフレーズが好きだ。スペイン的な言い回しらしいが人間が生きていく本質をついているような気がする。もちろん「なるようになるさ」とばかり適当に仕事したり、勉強したりしていたらエラい人からおしかりを受けるだろうが、実際のところ、努力と結果は直接、結びつかないことも多い。「なるようになるさ」と気楽にやる方がよかったりすることも多い。

東京ドーム。虎党にはこたえられない逆転勝利だったが反省点もある。昔は阪神ファンだったという巨人先発のルーキー高橋優貴に6回1得点に抑えられた。前回の対戦だった4月4日も6回1得点に抑えられ、負けている。新人相手に2回連続で同じような内容、結果なのはいただけない。

だけどこの日ばかりは細かいことは言うまい、と思う。今季巨人戦7試合目。令和になって初の「伝統の一戦」で見事な逆転勝ちだ。しかも役者がいい。7回、代打同点適時打の北條史也。同じく7回の2点勝ち越し打を放ったのは糸原健斗。さらに名実ともに巨人のスターとなった坂本勇人を抑え込んだ青柳晃洋。みんな阪神のこれからを託したい選手ばかりだ。

「結果オーライの勝ちというのがあるんや。そりゃ春先はしっかり形を作って戦わなあかん。でもな。夏場を過ぎたら結果オーライの勝利でもええんや」

巨人相手に燃えた生前の闘将・星野仙一から何度となく聞かされた言葉を思い出した。この日は「結果オーライ」には当たらない試合だったかもしれない。時期もまだ違う。でも巨人ベンチの継投失敗なのは間違いないだろう。それでも確立されていない相手のブルペン陣をしっかりとたたけたのはよかった。

ケ・セラ・セラ。結果オーライ。意味合いは少し違うかもしれないけれど、どちらも好きである。さあ、第2戦。エース菅野智之を打って巨人に連勝となるかどうか。それもケ・セラ・セラなのだけど。(敬称略)

1回裏巨人無死三塁、青柳は坂本勇を三直に打ち取る(撮影・前田充)
1回裏巨人無死三塁、青柳は坂本勇を三直に打ち取る(撮影・前田充)