「ああいうのは本当に難しい。なかなかできない」。打撃コーチの浜中治が舌を巻いたのは1回、先頭打者・木浪聖也の打席だ。亜大の先輩・薮田和樹からファウルで粘り、実に14球目を中前打。浜中は1打席で投手に14球を投げさせることの難しさを強調した。
ファウルに関しては高校野球ではいろいろな意見、考えがあるようだが、少なくともプロ野球で相手投手に球数を投げさせ、心身ともに疲れさせるのは勝つための当然の策だ。何より集中していなければできる芸当ではない。
結果以前にいいなと思うのが試合前から木浪が燃えていたことだ。前日6日の同カードで安打が出ていれば球団新人の連続試合安打記録を更新していた。結果は4打数無安打。タイ記録の13試合連続安打で止まった。それがかなり悔しかったようだ。
「昨日(6日)打てなかった悔しさがあって絶対にやり返してやろうと思っていました」。木浪は気合の入った言葉を繰り返した。やり返す。これがいい。
やられたら、やり返す。勝負の世界では当たり前だがそういう意識を前面に押し出す選手が阪神には多くない。クール、どこか冷めている感じが支持されるようなムードが流れる。それで勝っていればそれでもいいかもしれないが、勝てなければ、虎党にすれば「何してんねん」となる。
やり返すという意味ではこの1勝は大きい。これで今季の広島戦は12勝11敗となった。全25試合なので、あと1勝でカード勝ち越しが決定。「王手」をかけた勝利となった。
以前から書いているが阪神は広島にはやられ続けている。指揮官・緒方孝市が指揮を執って昨季まで3連覇を果たしている強いカープ相手に4年連続で負け越している。勝ち越したのは14年(14勝10敗)が最後だ。8日(マツダスタジアム)、21日(甲子園)に予定される残り2試合のうち、1つ勝てば5年ぶりの勝ち越しが決まる。
「木浪は気持ちで向かっていくタイプですから。あのヒットできょうはいける! というムードをつくってくれた」。浜中は木浪についてそうも話した。昨季までいなかった木浪がそんな雰囲気をつくれば、阪神も変わっていく。
逆転Aクラス、クライマックスシリーズ進出を言う前に、まず負け続けている広島に勝ち越す。それが眼前のテーマだ。(敬称略)




