阪神対広島 8回裏阪神1死二塁、北條は左越え2点本塁打を放ち手をたたいて喜ぶ(撮影・上山淳一)
阪神対広島 8回裏阪神1死二塁、北條は左越え2点本塁打を放ち手をたたいて喜ぶ(撮影・上山淳一)

指揮官・原辰徳が復帰した巨人は強かった。百戦錬磨の指導者が持つ力を認めるしかない。そんな日に阪神も勝った。昨季まで3連覇の覇者・広島相手に5年ぶりにカード勝ち越しを決めた。この1勝が意味を持てばいい。そう思った。

長いシーズン、いろいろな試合がある。負けていい試合はないが「仕方がない」という場合もある。広島にとってはそんな試合だったかもしれない。4連覇の夢が途絶え、現在3位。クライマックス・シリーズに進出し、日本一を目指す目標は残るとはいえ「優勝」というぜいたくに慣れた状況を考えればモチベーションはどうだろうか。

対して阪神。優勝を逃したのは同じだ。だがかすかに残る3位の可能性を追う意欲はひょっとして広島より上かもしれない。負ければBクラス確定の大事な試合だった。

そして、また、そんなときに負けるのが最近の阪神だ。だがこの日は違った。相手ミスにつけ込んでの逆転勝利。広島戦勝ち越しを決めた。決して小さくない出来事だ。

「勝って終わるのと負けて終わるのは違う。勝ってシーズンを終える方がいいに決まっています。あと5試合。ミラクル、起こしたいですね」。ヘッドコーチ清水雅治はそう言った。

4年前、金本知憲が指揮を執った1年目。阪神はラストを7連勝で終え、4位に浮上してシーズンを終えた。翌年はその勢いもあって2位になった。阪神の新監督が7連勝以上をマークしたのは04年岡田彰布以来のこと。その前は02年星野仙一だった。2人はともに2年目に優勝している。

「パワー・フィニッシュ」という英語を教えてもらったのは優良助っ人マット・マートンからだ。「マラソンでもフラフラになってゴールするのではなく胸を張ってゴールテープを切るのがかっこいいんだ」。

阪神は残り5試合。すべて勝っても6連勝フィニッシュ。今季ここまでの最長連勝は「6」。最多タイで残念ながら7連勝にはならない。それでもシーズンの最後に勝って終わるのは来季につなげるために意味があると思う。

来年3月に戦うオープン戦よりも今季の残り5試合の方が本気の実戦ということでは格段に身になるはず。そして勝利の先には、ひょっとして「CS進出」という“おまけ”もついてくるかもしれないのだから。(敬称略)

阪神対広島 ベンチから出てくる矢野耀大監督(撮影・清水貴仁)
阪神対広島 ベンチから出てくる矢野耀大監督(撮影・清水貴仁)