19年までの10年ひと区切りをテーマに阪神を分析し“猛虎の風説”について考える特別企画「この10年、阪神やっぱりこうやった!?」。今回は「阪神は若手育成がへた?」を、あえてドラフト1位に限定して考えてみます。そこから出た結論、藤浪は成功か? 失敗か-?
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結論としてはっきり言えることから始めたい。ここ3年、低迷している藤浪のドラフト1位指名は果たして成功だったのか。失敗だったのか。
「間違いなく成功だったと言えるでしょう。入団7年で50勝という数字は大学、社会人出の投手でもそんなに多くはいないと思います。4年目までは素晴らしいのひと言に尽きます」
こう話すのは近大でスポーツマネジメントの研究を続ける黒田次郎准教授だ。広島カープで通訳などを経験した異色の人物である。
先発投手に限って2010年からの10年間をセ・リーグ6球団で見てみる。ドラフト1位入団で規定投球回数に達した投手は計10人。3投手が達している広島はさすがと言えるが10人のうちで高卒は藤浪だけ。12球団で見ても高卒は西武菊池、ソフトバンク武田、日本ハム大谷の4人だけだ。
もちろん「新人=ドラ1」ではないが象徴的な存在であるのは間違いない。それだけに藤浪の活躍は従来の阪神に対する見方を変えさせるのに役立っていた。
投手より見極めが難しいとされる野手も見てみる。同じスパンで規定打席に到達したのはセ6球団で計11人。巨人が長野(8回)をトップに小林、岡本がそれぞれ2回、到達しているのは立派だ。
今季までDeNAの筒香、ヤクルト山田哲と突出した野手もいるが、規定打席に到達した選手数としては阪神も高山、大山、そして今季新人の近本と3人の名前が挙がる。
これだけを見れば若手を育成、起用するという阪神にとって長年のテーマが実を結びつつある気もしなくはない。もっとも結果として優勝に絡めておらず、数字だけの問題でもない。何をもって若手の育成がうまいというのかは実のところ、なかなか微妙な話である。
「藤浪投手も最初はよかったのにここ3年は3勝、5勝と来てついに今季は未勝利だった。これでは17年以降に何かがあったのかということを考えてしまいます。高山選手にしても新人年は良かったがその後が伸び悩んでいる」。黒田氏はこうも言った。
期待通りの働きができない「ドラ1選手」は他球団にもいくらでもいる。それでも目立ってしまうのが、一挙手一投足を報じられる12球団でも人気NO・1球団の阪神ということか。若手中心のチームで優勝するまで「若手育成がうまくない」という見立てを払拭(ふっしょく)するのは難しいような気もする。【編集委員・高原寿夫】
来季の開幕スタメンについて「若手生え抜き重視理想型」と「ベテラン助っ人現実型」それぞれを示したい。
【理想型】
中 近本
遊 北條(木浪)
二 木浪(糸原)
三 大山
右 高山
左 中谷
一 原口(陽川)
捕 梅野
投 藤浪
【現実型】
中 近本
遊 木浪(北條)
右 糸井
一 ボア
左 福留
三 マルテ
二 糸原(木浪)
捕 梅野
投 西勇