さあ、ボーアの対外試合デビューだ。しかも同じセ・リーグのライバル広島との練習試合。ボーア、サンズの新助っ人2人がスタメン出場する宜野座での注目の一戦である。

シート打撃でもすでに2本塁打をマークするなど持ち前の長打力を発揮しているボーアが広島相手にそれを見せられるか。なにしろ4番候補だ。彼が打つか打たないかは指揮官・矢野燿大が挑む2年目に大きな影響を与える。頼むで。

と、ここまで書いて言いたいのは「まあ、待ちなはれ」ということだ。キャンプ、あるいはオープン戦で大当たりして期待を持たせておいてシーズンではさっぱり…というのはよくあること。最近では18年のロサリオが記憶に新しい。

虎党はどれだけそんな思いを味わってきたか。もっともキャンプ、オープン戦からさっぱりという助っ人もたくさんいたけれど。いずれにしても言えるのはキャンプ、オープン戦で打っても、我々、阪神メディアを喜ばせる以外、何の足しにもならないということだ。勝負はシーズンである。

「もちろん分かっているよ。大事なのはシーズンだね」。ボーアはそう言ってニッコリ笑った。それなら安心。じゃあオープン戦は手を抜いていく感じかな? そんな問いにボーアが見せたジェスチャーには少々、驚いた。

体重を右に傾けながらバントの構え。そのままほんの少しだけ走った。なんとセーフティーバントで魅了するぜ、と言わんばかり。思わず笑ってしまった。

虎番記者たちに囲まれての取材でも守備につく可能性を聞かれて「サプライズ。もしかしたらショートかも」。こういうジョークというか笑いのセンスが、生粋の大阪人のこちらを刺激するのだ。

逆に言えば重量級で鈍足(失礼)である自分を十分すぎるほど分かって、それを笑い飛ばせるということだ。こういう人間は野球選手でなくても強いはず。昨季、途中加入だったソラーテは「どこでも守れる」という触れ込みだったが、特にどこも守れなかった。それとは違うようだ。

「実際の話、まだウチでもエース級の球は打っていないしね。これからだろう」。阪神関係者もそう冷静に見ている。パワーもジョークもなかなかのもの。それをどこまで日本流に対応できるか。ボーアの成功、そして阪神の躍進はそこにかかっている。(敬称略)

フリー打撃を前に素振りするボーア(撮影・清水貴仁)
フリー打撃を前に素振りするボーア(撮影・清水貴仁)