阪神のオープン戦開幕は快勝だ。投手もテンポよく投げたし、本塁打も出たし。昨季は10勝14敗1分けと苦しめられた中日相手にこんな試合ができるのなら、行く末はなかなか明るい。

そんなムードに乗れなかったのが5番一塁でスタメン出場しながら5打数無安打に終わった大山悠輔だろう。「三塁争いのライバル」とされるマルテが3回に大きな1発を放っただけに差をつけられた形だ。オープン戦初戦は完敗だ。

外国人選手との争いということで少し昔話を。新井貴浩が阪神にいた13年終盤。日刊スポーツが「ゴメス獲得へ」という記事を書いた。それに反応した新井は「外国人、取るんスか?」と聞いてきた。

右打ちの一塁手。自身とかぶる補強への危機感を隠さなかった。実際に14年はゴメスと定位置争いを繰り広げ、結果的にそのシーズン限りで阪神を退団。広島に復帰している。

記者としてもプロのシビアさを実感した経験だった。だが、ここで書きたいのは「それとは違う」ということだ。個人的な見立てで申し訳ないが、よほどのことがない限り、今季のサードは大山でスタートすると思っている。

ドラフト1位で入団し、まだ若く生え抜きの「4番三塁手」候補である大山に対する期待は当然、高い。この日も矢野は「結果が安打になってないだけでしょ」と結果を気にしなかった。そんな話をする段階ではないと言いたげだった。

外国人枠の問題もある。ボーア、サンズはいずれも新加入。現状、ともに大きな穴は見受けられないし、獲得した初年度に最初から使わないという選択肢は普通はない。投手の問題もあるし、マルテを開幕から1軍で使うことは考えにくい。そんな要素から開幕三塁は大山だと思う。

しかしシーズンが進んで状況が変化していけば、その限りではない。逆に言えば「三塁マルテ」になる状況はあまりいただけないのでは? ということだ。

サンズ、ボーアのいずれか、あるいは両方が不調でマルテを昇格させる。その段階で三塁を大山ではなくマルテに任せるという選択になるのなら、大山の状況が相当よくないということになる。助っ人野手3人制などはそれ以前の問題だ。

いずれにせよ現段階で大山に必要なのは「マルテの方が…」と周囲に思わせないプレーだ。打撃はもちろん守備でも。そこが大事だ。(敬称略)